以前、森林資源の保全を目的としたFSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)の森林認証制度をご紹介した。持続可能な資源利用が必要なのは森林だけではない。水産物もその一つ。水産物にも持続可能な漁業を推進する動きがある。今回は、漁業認証と水産物のエコラベル制度を通じて持続可能な漁業の普及を図っているMSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)の活動を紹介する。
一方で、MSCエコラベルの普及は日本ではこれからである。「全世界で販売に必要な流通段階認証を取得した企業は1,500社に達するが、日本では06年にイオンが採用した後、日本生活協同組合連合会など一部の企業・団体を加えた50事業者前後。
エコラベル付商品は2010年7月末で190点。水産消費大国にも関わらず、世界首位のドイツに比べて1割強。(出所:2010年11月10日 日本経済新聞 28面)」
MSCエコラベルの日本での普及の課題は何だろう。一つには、販売者がMSCに支払う手数料がありそうだ。エコラベルを付けて販売するには、MSCに売上高の0.5%に当る手数料を支払わなければならない。売上高の0.5%というのは、利幅の薄い日本の小売業にとっては相当な金額だ。「漁業者と加工業者も認証の取得に審査費用が掛かる上、数年おきに更新が必要となる。(出所:同上)」
ワシントン条約締約国会議でクロマグロの禁輸が取りざたされるなど、世界的に水産資源の保護に厳しい目が向けられるようになっており、持続的漁業に関する何らかの国際的な規格、認証制度が求められるのは自然の流れ。
MSCは、国連FAO(国連食糧農業機関)の責任ある漁業のための行動規範や水産物エコラベルのためのガイドライン、ISEAL(国際社会環境認定表示連合)の社会環境基準設定のための適正実施規範、WTO(世界貿易機関)の貿易の技術的障壁に関する協定といった水産物認証とエコラベリング制度における国際基準を満たしており、海外での普及度合いから見て、持続的漁業に関する国際的標準として、最も近い位置にあるのではないか。
それでも、効果の薄いものには、事業者は金を払えない。現在の販売支援効果に比べ、MSCのエコラベルの手数料0.5%というのは高いのではないか。MSCエコラベルの普及には、より少ない手数料で回るような体制を構築し、手数料を引き下げるといった工夫が、MSCにも求められるのではないだろうか?
MSCの認証制度は、事業者の販売を支援するものなので一概に比べられないが、商取引の中で提供されるコスト低減や業務効率化のサービス、ITソリューションの課金額は、せいぜい売上の数%。効果や機能が明確なものの課金でこの程度。幾らよい事をしているからといって、実際の販売促進効果がまだ明らかになっていないものに対して、売上の0.5%を課金するというのは、今の時勢なかなか難しい。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます