公益財団がプリウスをテアダウンするのは正しいのか?

2010.05.26

経営・マネジメント

公益財団がプリウスをテアダウンするのは正しいのか?

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

ある公益財団の協力により、日経BP社よりプリウスの分解レポートが今月末に発刊されます。 内容的には非常に興味深いものなのですが、本当に他人が一所懸命に培ったあらゆるイノベーションやナレッジを解き明かし、公にすることが公益なのでしょうか?

そんなことをしていると、「あそこは提案しても情報をただ取りされるだけでムダだ」と、すぐにサプライヤから良い提案が上がってこなくなります。

これからは、コスト競争が激しくなる中、イノベーションがますます必要になります。技術は専門化、高度化している中で、広くサプライヤの力を使わなければイノベーションを起こすことが難しくなっています。

でも、日本では、これまで同質競争が繰り広げられてきた結果、どの業界でも実際にイノベーションを起こすような提案力のあるサプライヤは、トップ10社の中でも2-3社といった所しかありません。ですので、そうした提案力のあるサプライヤは、今後ますます貴重になってきますので、大切に付き合っていく必要があります。

具合的には、採用したいと思われる提案がサプライヤから出てきた時には、そのサプライヤに敬意を払い、その提案を他の取引先にもっていくことなしに、ある程度の取引をそのサプライヤに付与するのです。

そうすることによって、また新たな提案がそのサプライヤから寄せられるようになり、継続的な改善、イノベーションがもたらされる取引関係の構築につながっていくのです。

とはいえ、今回の話は、実は調達・購買の話として書きたかったというよりは、あまり他人事ではないのでとりあげたというのが本音です。私共のソリューション業界は、正にナレッジで勝負する世界なのですが、どうも最近、行政によるナレッジの叩き売りや囲い込みの動きが気になっています。

ナレッジの叩き売りというのは、委託事業などでマネジメントノウハウをまとめそれを無料で公開する、囲い込みというのは、ナレッジやソリューションに認定制度や資格制度を設けて、それらを権益化してしまうという動きです。何れも、そうした動きの裏に入り込め、収益を上げられるのは、行政の複雑怪奇な取引先選定プロセスに食い込める体力のある一部の大手シンクタンクやソリューション会社です。

まあ、我われ中小ソリューション企業は、それでも頭を使って、そうした動きを上回る新たなイノベーションを世に出していくしか生き延びる術はないのでしょう。

正直しんどいです。果たして、こんなサイクルがいつまでも続くのか疑問です。その分野で活動する企業の層が厚い方がさまざまなイノベーションが生まれると思うのですが、これでは、中小ソリューション企業がすぐに淘汰され、新規参入もなかなか起こりません。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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