アイスランドの火山噴火に伴う欧州の飛行制限で、サプライ(供給)リスクのマネジメントに問題があったケースが明らかにされています。 今回は、これらのケースで何が問題であったか、どうすればそれが避けられたかを見ていきます。
要は、通常はあり得ないだろうと思えるようなトラブルを想定することです。簡単な事のように聞こえるかもしれませんが、通常あり得ないようなトラブルは、自分にとっての損害も大きく、こうした自分にとって望ましくない事態は、考えるだけでも恐ろしく、人は、生理的に「そうしたことは、自分には起こらない」と思考停止しがちです。ただし、これはあくまで願望であって、事実ではありません。「そうしたことは、自分には起こらない」というのは何の保証もないことです。
「担当者なら、何でそうした事態を想定しておかないんだ!」
経営者がこうした事態でよく逃げを打つ言葉です。確かに、担当者には、こうした事態を想定しておく責任はあります。しかし、担当者にそうした責任があることを理解させ、その責任を果たさせる責任が経営者にあります。担当者がやるべき事ができなかった責任は、究極的には経営者にあります。究極的にと言うと、難しいことを要求しているように感じるかもしれませんが、何のことはない、
「たとえば、この部品のサプライヤのラインがストップしたら、ウチの会社はどうなるんだい?」
と何気なく聞けば、自社のサプライリスクマネジメントがどの辺りにあるのかすぐ把握できることです。この簡単な一言すら発せられない経営者は、やはり経営者の責任を果たしていないと言えるでしょう。
あるカラオケチェーンの経営者のお客様は、新型インフルエルザが取り沙汰された時、ある地域の店舗で感染者が出て、それらの店舗を長期空けられなくなる事態を想定して、数千万を払ってそれに対応した保険に加入しました。
あらゆるリスクに対して保険に入ることは決して勧めませんし、当件に弊社が関わった訳ではありませんので、このお客様の判断が正しいものか否かは分かりません。ただ、ここでお伝えしたいのは、普通であれば、「新型インフルエンザ、怖いな、やだな。大変なことになったな。」で終わってしまうところを、自分の仕事、オペレーションに最悪どのような影響が出るのか、手を打つべきか否かをすぐに考えるこの方の凄さであり、その姿勢です。この方のカラオケチェーンが、カラオケ市場の激しい競争、リーマンショック後の消費不振にも関わらず業績を伸ばしているのは、この方のこうした姿勢と無関係ではないように思えます。
「想定外のトラブルを想定する」それがリスクマネジメントの第一歩です。
※本稿は、弊社が発行しているメルマガ「週刊 戦略調達」の記事を編集・加工したものです。「週刊 戦略調達」は、調達・購買業務とそのマネジメント、コスト削減・経費削減のヒントを提供すべく、調達・購買業務のマネジメント、戦略調達のプロフェッショナルが、最新のトピックスから、調達・購買業務におけるトレンド、業務への影響を解説したものです。最近の記事のバックナンバーの閲覧やご購読は、http://samuraisourcing.com/knowledge/weekly/ にて行えます。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます