史上初の野党第一党による完全マジョリティを握った政権交代をなしえた民主党ですが、その迷走ぶりが批判を浴びています。豪腕とか金権等批判の多い小沢幹事長ですが、田中角栄元総理直系の弟子としての、その戦略的マーケティングを見てみましょう。
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小沢幹事長は日本人として珍しいと言われます。かつて1993年に著した「日本改造計画」が大ベストセラーになったころ、今の若い人たちには全然知られていないかと思いますが、小沢氏といえば新保守主義の旗手であり、そのプラグマティズム、妥協しない(話もしない)政治手法や、湾岸戦争への積極協力姿勢から、反動政治家とも呼ばれていたのでした。
新党結成に比べ地味ですが、日医(日本医師会)新会長が民主党寄りになったことや、自民党元幹事長野中氏が会長をする全国土地改良事業団体連合会への予算半減等の、徹底した焦土戦の展開に、小沢氏の戦略を見た気がします。
敵に妥協せず、殲滅するまで攻撃の手をゆるめ無いのは戦争の基本ですし。
新党ブームがどこまで伸びるかはわかりません。しかし小泉旋風のような「風」頼りの選挙は全く勝ちが読めないことを、選挙のプロとして小沢氏は知り抜いているのでしょう。今の民主党におよそ順風が吹くとはとうてい考えられません。
「風」が頼りにならなければ何に頼るのか?組織票です。
日医やその他政治団体が、続々と民主党支持に変わっています。これはニュースなどマスコミに取り上げられることは少ないものの、「投票なんてしたって変わらないから行かない」といってる若者と違い、地味に効果を発揮できる土台となるでしょう。
新党は今のところイキオイはありますが、これまたイメージ戦略を考えると、マーケティングコミュニケーションにおけるクリティカルマス、つまり絶対認知において、当然弱さがあります。かつての細川・日本新党のような大ブームが、みんなの党として起こせるのか、それが出来なければ新党は結局たいした票を取れないことになります。
マスコミの論調と投票結果が全然違うのは毎回の選挙で証明されています。前回の民主党勝利は数少ない予想が当たったケースではありますが。
つまり小沢幹事長や民主党政権を批判している人たちが、どこまで批判投票をするか、これを見切ったのが小沢氏なのでしょう。
組織票をじっくり固め、また組織的に応援してくれそうな投票層へのアピール政策を実施。逆に投票に結びつかなそうな層への徹底した無視っぷりは、小沢氏らしいプラグマティズムと感じます。
小沢氏の政治の師・田中角栄元総理は、まず自民党で最大派閥を握ること、そして合従連衡策によって自民党の過半数を握ること、それが結果として与党のマジョリティを握ることを意味し、それはすなわち55年体制下では、日本の政治を握ることという、きわめて明確な戦略を駆使し、無所属でありながら田中派という、当時「軍団」と呼ばれた最強の派閥を率いたキングメーカーに君臨できたのです。クリティカルマスを確保すれば、勝利は得やすくなる。大資本がマーケティング上有利なのはこのためです。貧乏会社が乾坤一擲でチビチビ広告費を投入しても効果が無いのです。
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株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。