国内最大規模の求職者データベースを持つエン・ジャパン。転職サービスをメイン事業としながらも、求職者には安易な転職を勧めず、求人企業に対しても慎重な採用を求める。ともすると自社の利益と矛盾しかねないポリシーの背景に秘められた同社の哲学を探る。
最終回 「縁をつないでさらなる成長へ」
■転職プラスアルファの展開へ
「安易な転職は国を滅ぼす。転職サービス事業者のトップにしては、いささか矛盾した考えかもしれませんが、私を筆頭に当社は全員が同じことを考えています」
ネットを使った転職サービスの弊害もきちんと認識している。
「以前の日本はほぼ完全な終身雇用の世界で、雇用流動性が極めて低かった。ところがいくつかの要因が重なって2000年以降、一気に雇用が流動化し始めます」
ネットバブルが起こり、ベンチャー各社が活発に中途採用を行った。バブルがはじけると一転、旧来型大手企業までが新卒採用を絞り込んだ。特定年次の採用を減らせば当然、企業内での年齢構成に歪みが出る。追い打ちをかけたのが、団塊世代の大量退職である。
「バランスを戻そうとして2005年ぐらいから今度は大手企業が、いわゆる第二新卒を大量に採用するようなこともありました。求職者からみれば、転職するチャンスが飛躍的に増えたわけです。しかも情報はネットで簡単に手に入る。それまで何となく後ろめたいものとして考えられていた転職が市民権を得て、キャリアアップのためには転職すべきだ、という流れが出てきたのです」
適材適所、求める人材と送り込んだ人材がマッチすれば、お互いがハッピーになる。転職市場では、そのための仕組みをエン・ジャパン社がネット上に作り上げてきた。そして同社が次に目を向けたのが新卒採用だ。
「学生からじっくり話を聞いてみてわかったのが、彼らがあまりにも企業の実態を知らないこと。就職希望先として人気を集めるのは、テレビコマーシャルを流している企業だったり、あるいはメディアに取り上げられた企業ばかりです。有名ではなくとも優れた企業がいくらでも日本にあることは、地道に営業をかけてきた我々が一番よく知っている。そうした企業の内実を学生に伝える必要があると考えました」
その結果、生まれたのが学生向けの就職情報提供サイト「[en]学生の就職情報」。ここにも同社ならではのコンテンツ『プロの仕事研究』がある。規模の大小はあるにせよ、どんな企業にも必ずプロジェクトXがある。それを取材し、ありのままを学生に伝える。
「会社名ではなく、その会社で実際に行われている仕事に共感して入ってくる学生なら、定着率も高くなるはず。新卒入社した学生がころころと転職を繰り返してくれた方が当社の売上も上がり、ビジネスとしては良いのかもしれませんが」
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FMO第32弾【エン・ジャパン株式会社】
2010.04.08
2010.04.01
2010.03.25
2010.03.18