国内最大規模の求職者データベースを持つエン・ジャパン。転職サービスをメイン事業としながらも、求職者には安易な転職を勧めず、求人企業に対しても慎重な採用を求める。ともすると自社の利益と矛盾しかねないポリシーの背景に秘められた同社の哲学を探る。
第3回「社名を変え、体制を変え、いざ勝負へ」
■代理店としてのけじめを徹底する
「既存クライアントは一社残らず、リクルートさんに返すこと。これまでのテリトリーだった大阪ではなく、東京で起業すること。清水の舞台から飛び降りるような決断です。創業者の胆力には感服します」
2000年、日本ブレーンセンター・デジタルメディア事業部が独立する形で、エン・ジャパン社が開業した。筋を通すためにリクルートの代理店として抱えていた顧客をすべて返上し、拠点もあえてしがらみのない東京へシフトした。思い切った賭けである。
「創業者でなければ下せない決断でしょう。しかし、ここまで徹底することが、お世話になったリクルートさんへの恩義だと越智は常々語っていました。その意味はよくわかります。そもそも転職マーケットを開拓したのはリクルートさんです。しかも、あれだけのガリバーとなりながらリクルートさんは、市場の健全な成長のために無意味な価格競争を慎重に避けてこられました」
そのリクルートも紙媒体をようやくネットに移行してきた。ただし、エン・ジャパン社とは微妙に方向が違っていたのだ。
「ネットでは小さいながらも我々が先行しています。だからというわけでもないのでしょうが、リクルートさんはデータベースを活用したマッチングサービスを売り物にされました」
最大手が異なる戦略を採ってくれたことは、エン・ジャパンに有利に働いた。ユーザーにわかりやすい情報を可能な限りきめ細かく提供するエン・ジャパンのやり方が、結果的にはユーザーからの高い評価につながったのだ。
「弱小体制からのスタートとはいえ、既に我々には5年分のアドバンテージがあります。ノウハウの蓄積もあります。例えばサイトのユーザビリティについても、そんな言葉がまだなかった時代から我々は、使いやすさを徹底的に追求していました。成果は確実に出ていたのです」
直感的に使えるわかりやすさ。求める情報に最短距離で到達できるクイックネス。さらに情報量に制限のないメリットをフルに活かしたネットメディアこそは、エン・ジャパンが求める理想のメディアである。
■注文の多い営業社員
「営業については、当初から直販制を徹底してきました。代理店制度を否定するつもりはありませんが、当社のポリシーを貫くためには直販制を貫くしかなかったのです」
エン・ジャパンのポリシーは、求職者と求人側のベストマッチングである。そのため求職者が事前に知ることのできる情報は、多ければ多いほどよい。マッチングの精度が高まるからだ。とはいえ広告費を支払ってもらうクライアントから根掘り葉掘り、言わずに済ませたいような情報までを引きずり出そうと思えば、営業社員には相当なノウハウが求められる。
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FMO第32弾【エン・ジャパン株式会社】
2010.04.08
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