SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で友人などと一緒に簡単なゲームをプレイする「ソーシャルゲーム」が流行っている。SNS上に形成されているコミュニティを活用したゲームなのだが、既存のオンラインゲームのビジネスモデルとの違いはどこにあるのだろうか。[野島美保,Business Media 誠]
過熱した招待制はユーザーを疲弊させる危険がある。より招待数を増やそうとして、今までにない魅力的なプレゼントを用意したキャンペーンを始めても、すでに友人を招待し終わった忠誠心の高い利用者(ロイヤルユーザー)にとっては、逆に裏切られた感が出てくる。招待数の推移は数値として追いやすいので注力されがちだが、長い目でみたロイヤルユーザーの定着を考える必要がある。
リテンションとしてのコミュニティ
ソーシャルゲームの継続利用をうながすコミュニティ効果は、少なくとも3つあると考えられる。
よく知られた効果は「ネットワーク外部性」である。「ネットワーク規模がサイトの価値を決める」というこの理論では、「利用者数を増やすことでゲームの魅力を高めることができる」としている。多くのユーザーがプレイしているという事実によって、既存顧客を引き止めることができるのだ。
一方、コミュニティの質的な効果に着目したのが、他ユーザーとの共同プレイである。サンシャイン牧場で友人の農作物に虫を付けるといったアクション、あるいはランキング競争など、他人とのやりとりを埋め込むことでゲームが奥深くなるという効果である。
そもそもゲームは1人でするよりも、他人と遊んだ方が面白い。カードゲームやテーブルゲームなど、多くの古典的なゲームは他人と遊ぶものであった。すると、他人と遊ぶオンラインゲームやソーシャルゲームのスタイルは、現代のトレンドという特別な風潮ではなく、むしろ普遍的な人間行動であると言えるだろう。
3つ目の効果は、人間関係の維持である。ゲーム自体には飽きているが、そこで知り合った友達と接点をもち続けるために続ける。こういうプレイ行動はMMOでよく見られた。その結果、1年超にわたって1つのゲームをプレイし続けるという高い定着性が実現した。
ソーシャルゲームの場合に問題となるのが、ゲームとコミュニティが分化している点である。ゲームを辞めてしまっても、フレンドリストはSNS内に残っている。人間関係の維持にかけるモチベーションは、その人間関係が限定的でもろいほど、かえって強くなる。リアルで接点があるなど、ほかに抜け道があると「本気」になれないのである。
マネタイズとしてのコミュニティ
マネタイズの局面でみられるコミュニティ効果の例として、アイテム課金とフレンド課金の2種類が挙げられるだろう。
現在よく用いられているアイテム課金については、アバターの服であれ家具であれ、「リアルマネーを支払うだけの価値があるものだ」という信念が、ユーザー間で形成されなければならない。仮想アイテムに意味を与えるのがコミュニティである。「アバターや家を飾りたい」と思うのは、見せる相手がいるからである。他人の目があるからこそ、自己表現という欲求や競争心が生まれ、アイテム消費につながる。希少性のあるアイテムはさらに売れるが、希少性もほかのユーザーとの比較から生まれる概念なので、まずはコミュニティが形成されなければ、売り物になる仮想アイテムは生まれない。
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ソーシャルゲームビジネスモデル
2010.03.15
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