無料経済とも言われるインターネットだが、オンラインゲームはユーザー課金に成功している。その成功の秘密とは何なのか、「ブラウザ三国志 for mixi」を例にソーシャルゲームのビジネスモデルを解説する。 [野島美保,Business Media 誠]
無料経済とも言われるインターネット上で、オンラインゲームがなぜユーザー課金に成功できたのか? それは、「欲を作り出すのがうまいビジネスだからだ」と筆者は考える。洋服でも家具でも、バーチャルなものを買う行為には共通点がある。共通点とは「最初からバーチャルアイテムが欲しくて始める人はいない」ということである。バーチャルな高級肥料が欲しくて、農園アプリを始める人はいないはずだ。
「ゲームとしてよくできている」「動画として面白い」などというコンテンツ品質は、ただそれだけではマネタイズに結びつかない。マネタイズの条件はユーザーに、ゲームを始めてから財布を開くまでの心境の変化を起こさせることである。その変化を、「フック(始める理由)」「リテンション(続ける理由)」「マネタイズ(支払う理由)」と呼ぶことにする。この3ステップを途切れさせないように注意しながら、ユーザーの欲を醸成していく。お金を払ってまで使い続けたいと思わせる“何か”を作り出すのだ。
今回のコラムでは、フック・リテンション・マネタイズ理論を使ってソーシャルゲームの構造を図解。その具体例として、最近人気を集めているmixiアプリ「ブラウザ三国志 for mixi(mixi内のページにリンク)」を紹介する。
ソーシャルゲームの二重構造
ソーシャルゲームのビジネスモデルを描くと下図のようになる。ポイントは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にもフック・リテンション・マネタイズの仕組みがあり、その上にソーシャルゲームが乗っているという二重構造である。
「簡単なゲームだからビジネスも簡単」というわけにはいかない。SNSとソーシャルゲームの二重構造により、ゲームへの支払いというゴールにたどり着くまで、これだけの道のりがかかるのだ。「ユーザーの気持ちと欲を育てる」道のりも長くなり、従来のオンラインゲームよりむしろ難しい点もあるかもしれない。
もともとSNSは、同級生などのリアルの人間関係をフックとして集客するビジネスである。そこに日記という継続性が求められるコンテンツを置くことで、ユーザーの定着(リテンション)を促している。そして、自ら情報発信をしたり、SNSだけの友人を作ったりと、SNSでの活動が活発になるとリテンションが高まる。SNSコミュニティは、リアル友人関係とSNSでの人間関係を合わせたものとして形成される。
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ソーシャルゲームビジネスモデル
2010.03.15
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