SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で友人などと一緒に簡単なゲームをプレイする「ソーシャルゲーム」が流行っている。SNS上に形成されているコミュニティを活用したゲームなのだが、既存のオンラインゲームのビジネスモデルとの違いはどこにあるのだろうか。[野島美保,Business Media 誠]
筆者は人が仮想世界に価値を感じるようになる心理プロセスには、ある程度の普遍性があると考えている。これをまとめたものが拙著『人はなぜ形のないものを買うのか 仮想世界のビジネスモデル』で、主にゲームにおけるマネタイズ(ユーザー課金)の方法について論じた。既存ビジネスがWeb上で課金モデルを構築するのに苦戦する中、ゲームは10年前からマネタイズに成功している優良事例で、ほかのコンテンツへの応用も期待されている。
このコラムは、その本で扱ったゲーム・マネタイズ理論の続編である。近年、ソーシャルゲームや携帯アプリなどのゲームが一般層に広がり、ゲームビジネスとほかのコンテンツとが融合し始めている。そこで、こうしたライトなゲームを題材にして、コンテンツのマネタイズに必要な要素を考えていきたい。
ソーシャルゲームの可能性
ソーシャルゲームの特徴は、友人を気軽に招待できることや協力して遊べることにあり、「コミュニティの力でゲームの魅力を高めていること」と言われる。しかし、これは従来のオンラインゲーム(MMO)でも実現されてきたことで、決して目新しいものではない。
ソーシャルゲームの最大の特徴は「既存のSNSコミュニティにゲームコンテンツを後付けすること」である。このことから、今までにはないメリットが生まれた。
1つは、集客のための時間とコストが大幅に削減されたことだ。通常のオンラインゲームでは、ゲーム認知のための広告からβテスト(≒無料プレイ期間)などの集客期間を経る必要があるが、1000万人規模のユーザーがいるSNSで展開すれば、そこに広告を出したのと同じ効果が得られ、集客の手間を大幅に省くことができる。
さらに、すでに形成されているユーザー同士のコミュニティを利用して、「友達をアプリに招待する」というInvite効果もかなり期待できる。ゲームは友達と一緒にプレイした方が楽しいし、アプリを招待することの心理的なハードルも比較的低い。
フレンドリストには載っているものの、日記にコメントを付けるほどの間柄ではなく放置しているという人間関係がSNSには存在する。「友人のページを訪問して足あと(アクセス履歴)を残しながら、日記にコメントを付けたりメッセージを送ったりせずに無言で立ち去ってはいけない」という風習(参照記事)も一部で生まれ、強制的に言語コミュニケーションをしなければならない重荷を指して「SNS疲れ(参照記事)」という言葉も出たくらいだ。
次のページまだ議論されていないコミュニティ効果
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
ソーシャルゲームビジネスモデル
2010.03.15
2010.02.16
2010.02.01