エコ、グリーン、環境に優しいといった言葉で安易に社会的価値に訴えるのは、安易なように見えて、実は両刃の剣です。今回は、そうした行動が、いかに情報の出し手である企業にとって望ましくない結果になるか、また、そうならないようにするにはどうすれば良いかについてのお話です。
環境コミュニケーションの難しい所は、環境、エコ、グリーン、地球に優しいといった言葉が、非常に主観的かつ色々な意味を持つ点にあります。これらの言葉は、聞き手により、省資源、省エネルギー、温暖化ガス削減、生物多様性、様々な意味を持ちます。また、これらの項目への影響に対して、自社の商品・サービスの製造・提供過程だけではなく、提供後のライフサイクル、部品、原料、資材の源流も含めて評価しなければなりませんが、情報の出し手、受け手の何れもが、分かりやすい目の前のものだけの短期的な情報だけを頼りに判断してしまう罠に陥りやすいという点もあります。
こうした問題に対して、日本では、すぐに政府や第三者機関が規制すべきという発想になりがちですが、それはあまり得策ではありません。企業が発するあらゆるコミュニケーションをチェックする機関の維持には、膨大なコストが掛かります。
環境負荷の削減にはイノベーションが不可欠ですが、規制はそれだけを守っていれば良いという考えや、規制から外れたものは、イノベーションであっても悪であるという考えを強める方向で働きます。製紙メーカ各社や日立アプライアンスのエコ偽装がそうであったように、規制や認証には結局抜け道があり、コストばかり掛かって、価値を生まないものが少なくありません。
日立アプライアンスの冷蔵庫は、財団法人省エネルギーセンターより3年連続で省エネ大賞を受賞していましたが、そもそもこの財団法人は、電機など大手メーカ各社社長が理事として連なっており、日立アプライアンスの親会社の日立製作所からも、現在は庄山相談役が理事を務めています。チェック機関には高い技術評価能力が求められますが、独立した機関でそれだけの能力を保有できるか、保有できたとしても、そのコストを維持し続けられるかという課題があります。これらの問題を考えると、規制やチェック機能は、悪質な違反に対する罰則規定に留めるのが、現実的な線でしょう。
となると、一つの解は、一人ひとりの買い手が、情報への批判能力を高める事にあります。環境コミュニケーションは、玉石混交あるという前提に立った上で、本物を見極める必要があります。政治やマスメディアは民度の反映とよく言われますが、商品・サービス・企業に対する評価も、情報の評価能力という観点から、民度が反映されるものと考えられます。買い手側には、グリーンウオッシュ企業を見極め、それらの企業を排斥すると共に、環境負荷の削減に真剣に取り組んでいる企業を支援するという姿勢が求められます。難しい事のように思えますが、この見極めの第一歩は、非常に簡単なもので、環境、エコ、グリーン、地球に優しいという表現に対して、「何が?」「どうしてそう言えるの?」と自問自答するだけで、根拠や関連のないコミュニケーションは簡単に見破る事ができます。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます