冬の風物詩『浮かれ電飾の家』への視線は、なぜ冷たいのか?

2009.12.20

ライフ・ソーシャル

冬の風物詩『浮かれ電飾の家』への視線は、なぜ冷たいのか?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

この時期に、商業施設でもない一般家庭が、何故かご自宅のファサードを電飾してしまう。それをヒトは、ちょっと皮肉も込めて『浮かれ電飾』と呼ぶ。

「浮かれ電飾を鑑賞する」というサイトがある。ご丁寧に、2004年から5年に渡り、全国の「浮かれ電飾の街」をレポートしてくれている。なかなか興味深い。「浮かれ電飾の家の主=浮かレンジャー」への取材も決行しているところを見ると、すっかり市民権を得た感がある。

しかし、一般家庭の個人宅が電飾で飾られピカピカすることに違和感を感じる方も多いのではないかと思う。『浮かれ電飾』という呼び名にも、それは込められている。その違和感の根源は何なのか?

『浮かれ電飾』を分解してみると・・・
① 電飾は、行為効果が高い。暗闇に、電飾=安くて目立てる。
② 浮かレンジャーのセンスがもろに出る。

この2つだけをとれば「クルマ」にペインティングしたり、電飾したりするのと同じことだ。しかし、問題は、「家」であることだ・・・

③ 近隣への配慮と自己顕示が拮抗していて微妙。
「家」は、私財なのか?公共財なのか?そこらへんの受け止め方にある。どうも「浮かれ電飾の家の主=浮かレンジャー」が、近隣や周辺環境への手応えを信じてやっているであろう感じに、微笑ましい皮肉が込められるのだろう。みんなが浮かれているわけじゃねぇんだよ・・・という公共的視点が、というネーミングの根っこである。みんなで浮かれよう、みんなで陽気に行こうというのは、なかなか日本では定着しにくい。

「浮かれ電飾を鑑賞する」を読み進めると、おもしろいことに気づく。

『浮かれ電飾』の本場は、沖縄。
『浮かれ電飾』のメッカは、舞浜。


沖縄には、米軍基地がある。舞浜と言えばディズニーランドがある。街全体が、公共的に、アメリカっぽいところに『浮かれ電飾』は、増殖するわけである。

「浮かれ電飾を鑑賞する」のサイトの主は、下記のようにコメントしている。
一昨年に舞浜を取材し、その浮かれの質と規模に「もうひとつのエレクトリカルパレードだ!」と度肝を抜かれたが、聞けばこの浮かれ電飾、本場はアメリカだそうだ。「本場」の意味がよく分からんが。クリスマス自体が輸入品なのだから、それに付随した浮かれ電飾が輸入品であっても不思議ではない。それに陽気なヤンキーたちが浮かれた挙句に我が家を電飾するさまは光景としてしっくりくる。
※「浮かれ電飾を鑑賞する」より

景気は、底だ。政権交代への浮かれ感も、そろそろ沈静化。「安易に浮かれる」ことへの反省と懸念は、ますます大きくなる。アメリカ的なるものへの日本の自省は、ますます深くなる。

この冬、『浮かれ電飾』への目線は、昨今になく冷たいかもしれない・・・。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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