より大きな改革にはより多額のコストが要求されるのが常識。 でも、より多額のコストは、より高い効果を保証しないのも常識。 ここで大切なのが、より重要なことを見極める感覚(Sense of importance)です。
大抵の改革は限られた資源の中で実行しなければならないという容赦のない現実があります。
ブラットンの改革もそうでした。犯罪数の軽減に予算追加は認められず。
先に例を出したNY市警の改革の話の続きです。
前回の記事→http://www.insightnow.jp/article/429
単純に考えて、地下鉄の治安回復には、これまで以上の警官を増員し、警戒強化することでした。
企業における改革でも、時間や品質向上のためには、それなりのコストがかかると考えられます。
業績を高めるにはそれに見合ったコストがかかるという前提に縛られてしまうものです。
ブラットンは、警官を増員せずに治安を劇的に取り戻しました。
その方法は、犯罪件数によって地下鉄の駅の中から重点域を絞り込み、
そこに警官を集中配置して、犯罪勢力を圧倒するというものでした。
ここでのポイントは、治安回復=犯罪件数減少という課題に対して、
増員という解決策(ソリューション)を初めからあてがうのではなく、
犯罪は一体どこでどの程度起きているのかを分析し、
より重要な駅を見極めたことです。それが数字となって結果になり、驚くべきスピードで波及した。
<論理的>に、より重要なことを見極めたわけです。
もう一つ大事なことがあります。
ブラットンは、「割れ窓理論」として知られる方法を採用しました。
それは地下鉄の落書きを消し、割れた窓を修繕すること。そしてNY市街も同じようにしてゆきました。
単純に考えて、治安回復には、犯罪の取り締まりを強化すべきところを、
環境改善という途方もなく間接的に見える解決策で改革を成し遂げようというのです。
地下鉄は治安を取り戻し、NYは犯罪都市の汚名を払拭できました。
これは、割れた窓を放置していると、人目が及ばない場所であると受け取られ、小犯罪を誘発し、
それがエスカレートして大犯罪につながるという人々の心理面のメカニズムを踏まえての策でした。
<心理的>に、より重要なことを見極めたわけです。
既成の概念に捕らわれて、慣習的に考え、経験習慣的に解決策ありきで思考してはダメです。
効果を最大限に<上げる>ティッピングポイントは何か、論理的に切り出す力が必要です。
でも論理だけでは人間はやってゆけません。置かれた環境によって育まれた情緒と感性が絡んでいます。
経験のないリーダーはそんなものはあたかも無い、後で付いてくる、大したことはないとお粗末に考えます。
効果を最大限に<引き出す>ティッピングポイントは何か、心理的な要素の見極めが必要なのです。
それは相手の価値観によって築かれるものです。
相手つまり、顧客や現場や担当者やユーザーや管理者や経営者・・・です。
あなたは、より重要なことを見極められますか?
----- Lesson Learned -----
より重要なことは、論理面と心理面から見極める
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社インサイト・コンサルティング 取締役
わたしはこれまで人と組織の変革に関わってきました。 そこにはいつも自ら変わる働きかけがあり、 異なる質への変化があり、 挑戦と躍動感と成長実感があります。 自分の心に湧き上がるもの、 それは助け合うことができたという満足感と、 実は自分が成長できたという幸福感です。 人生は、絶え間なく続く変革プロジェクト。 読者の皆様が、人、組織、そして自分の、 チェンジリーダーとして役立つ情報を発信します。