四半世紀にわたって、ラーメン界をリードしてきた「博多 一風堂」。その経営者・河原成美氏はどのような思いを込め、ラーメンを作り続けてきたのだろうか? 彼の人生を振り返りながら、ラーメンに対する熱い思いを紹介する。 [嶋田淑之,Business Media 誠]
『2-6-2の法則』というのがあって、来店してくださったお客様の2割はファンになってくれるが、6割は『まあ、こんなものかな』と思い、最後の2割はアンチになる、とされています。でも来店する前からアンチだったお客様なんていないわけですよ。むしろ期待感に胸を膨らませて、とても楽しみにして来てくださっているんです。それなのにアンチになってしまうのは、100%店側に責任がある。プロ意識の欠如が原因なんです。だから我々は、アンチの2 割をいかに減らすかに常に注力しないといけない」
そのための基本中の基本として河原さんが挙げるのが、「QSCの徹底」だ。
QSCの徹底が繁盛店作りの第一歩
QSCとはQuality(品質)、Service(接客サービス)、Cleanliness(店内外の掃除)を指す。これらの徹底が繁盛店作りの第1歩であることは今や常識だ。しかし飲食業界ではあまり深く考えられていないのではないだろうか。河原さんが大切にしているサービスの1つに「お客様を一個人として尊重する」というのがある。
「一般に飲食店では、お客とか顧客という名前で十把一絡げにしがちですが、1人1人の方にはちゃんと名前があり、その人ならではの歴史があり、家族や友人がいて、それぞれに喜怒哀楽の感情があるんです。だからこそ来店してくださったお客様の顔を覚え、さらには嗜好(しこう)を覚えるという努力を通じて、一個人として尊重して差し上げることが何よりも大切なんです」
筆者はこの取材時に、その思想の片鱗を垣間見たように感じた。というのも河原さんは2時間のインタビューを通じて、初対面の筆者をいくどとなく名前で呼んでくれた。
「僕は、次から次へと現れる誰だかよく分からない取材陣の1人としてあなたに会っているのではない。他の誰でもない嶋田淑之という1人の人間と会っているのだ」
これは経営者へのインタビューではまれな体験といってよい。河原さんが世の中に向けて発する心構えや教訓はまさにご自身が長い間、日々、励行していることそのものなのであろう。それだけに、河原さんがこれからのラーメン界を担うべき若い人たちに対して求めることも明確である。
若い人たちに期待することとは?
「社員としての採用基準としては『豚がら・鶏がら・人がら』と言いますが(笑)、素直で明るい優しい人で、飲食や人が好きという人が望ましい」
ラーメン作りを天職だと悟った人でなくても良いのだろうか?
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「博多 一風堂」河原成美物語
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