~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語 を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
イランには、正規軍と革命防衛隊という2つの軍が存在する。
革命防衛隊という組織は、革命の指導者といわれる、故ホメイニ師
が創設した軍事組織で、兵力は12万5千人を誇る。
兵員数では、35万人の正規軍には劣るものの、弾道ミサイル部隊など
の戦略部門を所有し、また、傘下には民兵組織バンジ(人民動員軍)
を持ち、後に核開発などや対外工作にも関与しているとされており、
イスラム最高指導者が権力を維持するために必要不可欠な最後の砦
的直轄軍事組織という位置づけを持つ、とてもとても怖い組織である。
パーレビ王朝でタガが緩んだイスラムの教えを厳格に元に戻し、それ
を監視するというミッションを持っており、いわば旧日本軍でいうと
泣く子も黙る「憲兵隊」と同じである。
「どんな刑罰なんですか?」 宮田が恐る恐る聞いた。
「もう何年も前になるが、競合の糸紅物産の社員が酒がからんだ
女関係で問題を起こした際、三頭の馬から垂らされたロープの先に
両腕をしばられ、素っ裸のまま3時間市中引き回しの刑を受けたと
いううわさがある。
ああー。 俺はもう駄目だ。 もうこのテヘラン店も終わりだ。
おれの社会人人生もこれで終わりだ。 あともう少しで駐在期間が
切れて晴れて日本に帰国できて、サラリーマンとして平穏に終える
ところだったのに!」
< 酒と女で問題起こしたらそらあかんやろ。
この国でのうても。 ましてやイスラムのこの国で・・ >
頭にネクタイを巻き、上半身裸でステテコ姿のままの永井支店長は、
酔いも手伝ってかそう言い放つとその場でしゃがみこんでオイオイと
泣き始めた。
気持はわからないでもないが、丸の内重工の人々もどのように励ま
していいかわからず、この一件でそこにいる誰もが皆、一気に酔い
が覚めてしまった。
翌日からは今回の出張の主目的である技術説明会が始まった。
プラントの購入主体であるアロイコ側から10名、丸の内重工から
は、内村主任技師をチーフとして、技術者7名、営業2名、それと
宮田と大日本商事テヘラン店の機械担当藤井が出席した。
三日間にわたり丸の内重工が提案している圧延機の内容説明並びに
質疑応答がなされ、丸の内重工の熱心で丁寧かつわかりやすい説明
のお陰で、アロイコ側もほぼ内容には満足感を示していた。
この技術説明会をクリアできれば、今までの交渉を通じて価格など
のコマーシャル面にはすでに満足していると表明しているアロイコ
向けのこの商談はほぼ成功と言ってよかった。
< 結構楽やないかい。 丸の内さんに任せて、黙ってれば
まーまーいいのやろな。 >
今回は結構楽な出張だなと宮田は内心そう思い始めていた。
ところが、三日目の最終日の夕方、会議がこれでまさに終わるかと
思えたところ、アロイコの調達部長ムハンマドが、突然アロイコを
代表してとんでもない注文をぶつけてきた。
次回に続く。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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