~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
【前号までのあらすじ】
海外の名だたる企業とビッグビジネスをすることを夢見て、憧れの
総合商社に入社したしんちゃんであったが、配属後すぐに地道な国
内商売の担当になってしまう。 同期が華やかな輸出入ビジネスな
どの海外取引、海外出張などグローバルなビジネスに関与しだし始
めているなか、自分は一体いつまで地味な国内商売に関与し続けな
ければならないのか? 一体いつになったら海外とのビジネスに
携わることができるのか? と、自分の抱いていた夢やあこがれと
現実のギャップに毎日悶々と自問自答する日々が続いていた。
3年目を迎えたある日、海外への飛躍の機会が突然転がりこんで来
た。 ただ、出張を命じられた国は、戦争真っただ中のイスラム
の大国、イランであった。
第三章 初めての海外出張
「これは何だ!?」
イラン国テヘラン国際空港の税関係官がこれでもかというほどの
ギンギンの疑いの眼で聞いてきた。
その時宮田はとっさに答えた。
「こ、これはTAMAN(田万)というジャパニーズライスジュースだ!」
「ライスジュースだと? それではこの数字は何だ?」
係官が指し示すラベルの先の数字の前後には、カタカナと漢字でこう
書いてあった。
(アルコール分25度)
幸運にもアルコールという文字が英語で書かれていなかったことを
とっさに宮田は確認して堂々とこう言い切った。
「米の成分が25%ということだ」
係官は、宮田の返事に一瞬怪訝な顔をしたが、次々と紙パックを手
にしてしきりに振って、ちゃぷちゃぷという音を何度も立てながら、
他の同僚係官となにやら話してから、最終的に宮田にこういった。
「検査は終了だ。 週刊誌だけ没収する。
スーツケースのふたをして行ってよろしい」
< あー、 よ、良かったー・・・。 ふー・・・ >
検査自体はものの20分ぐらいだったが、宮田にとっては数時間に
感じられた。
終わったときには汗だくで放心状態であった。
税関を無事めでたく通過した宮田は、バゲッジクレーム(荷物受け
取り場)で心配そうに待っていた内村技師と合流した。
「宮田さん。 絶対出て来れないと思ってました。
よかった。 よかった。 本当によかった。
それにしても日本酒を12本もこのイランに持ち込んだなんて。
私も中東での仕事長いけどそんな日本人見たのは宮田さんが初め
てだ」
空港から外に出て天を仰いで見ると、9月のテヘラン市内は、標高
が高いこともあって、深い紺青色に澄んだ青空が広がるとても気持
ちのいい天気に覆われていた。
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