~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
【前号までのあらすじ】
海外の名だたる企業とビッグビジネスをすることを夢見て、憧れの
総合商社に入社したしんちゃんであったが、配属後すぐに地道な国
内商売の担当になってしまう。 同期が華やかな輸出入ビジネスな
どの海外取引、海外出張などグローバルなビジネスに関与しだし始
めているなか、自分は一体いつまで地味な国内商売に関与し続けな
ければならないのか? 一体いつになったら海外とのビジネスに
携わることができるのか? と、自分の抱いていた夢やあこがれと
現実のギャップに毎日悶々と自問自答する日々が続いていた。
3年目を迎えたある日、海外への飛躍の機会が突然転がりこんで来
た。 ただ、出張を命じられた国は、戦争真っただ中のイスラム
の大国、イランであった。 そこでは、日本ではとても経験できそ
うにない体験が待っていた。
いよいよ海外の顧客とのネゴシエーション(交渉)が始まった。
さー百戦錬磨の中東のクライアントにしんちゃんはどう立ち向かう
のか?
今回は結構楽な出張だなと宮田は内心そう思い始めていた。
< 商社マンっちゅうのも結構楽かも。 主役は丸の内さん
やし、こっちは会議中、小難しそうな顔して、会議の隅で黙
って座っとれば行けそうや >
ところが、三日目の最終日の夕方、会議がこれでまさに終わるかと
思えたところ、アロイコの調達部長ムハンマドが、突然アロイコを
代表してこう言い出してきた。
「大日本商事/丸の内重工連合のコンソーシアムには、ある点で我々
は大変失望している。
なぜなら、そちらの提案は明らかにオーバースペックとなってい
る。 我々が要求していない設備までもが入っているからである。
これは明らかな過剰仕様と言わざるを得ず、そのため価格も他社
と比べて高くなっており、このままでは発注できない。
従ってこのままの仕様で価格を下げるか、この過剰仕様のところ
を削除して再見積もりするかにして欲しい。
でないと、この案件は、それで終わりということになる」
オーバースペックとは、本来顧客が欲しいとして要求していない仕
様を含む、それ以上のものまで過剰に提案に含まれているという提
案内容のことをさしている。
突然のことなので、日本側は呆然として皆がお互い顔を見合わせた。
< な、何やねんな。 このおっさんは。 ほんま、急に!
しばいたろか! >
半分居眠りをしていた宮田は周りのざわつきで目が覚めて、ハっと
して身を乗り出して尋ねた。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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