『機動戦士ガンダム』の監督として知られる富野由悠季氏が7月7日、東京・有楽町の日本外国特派員協会に登場、自らの半生や映画哲学などについての講演と質疑応答を行った。後半では質疑応答の内容を詳しくお伝えする。[堀内彰宏,Business Media 誠]
――「日本アニメの衰退期は長くは続かない」ということですが、これから日本のアニメ業界を盛り上げていくものはどういうところから出てくると見ていますか?
その質問についても同じ解答しかできません。分かっていれば私がやっていまして、「来年のヒットを全部取るぞ」ということです。
ただ、文化的な行為ということで言えば、どのように過酷な時代であっても、逆にどんなに繁栄している時代であっても、その時代の人々はその時代に対して同調する、もしくは異議申し立てをするような表現をしたくなる衝動を持っています。そういう意味でも、人間というのは社会的な動物であると思います。
そうすると、この不況からこれから2~3年少しずつ景気が良くなっていくという時代に刺激された世代、20代後半から30代前半の人々が、「まったく違う形のアートなり芸能のスタイルというものを打ち出すのではないか」と思っています。最近、ニュースになっているマイケル・ジャクソン氏の例を挙げれば分かる通りです。『BAD』以後のことを考えた時、もうそれから20年超えている。(新しいものが)出てこないわけがないんです。その(世代の)人たちの持っているポテンシャルというものが発露されるのがこれから2~3年、新しい形、違う形での文化論やカルチャー論、アートが現れてくると思っています。
1分の1のガンダム像を見た時、想像しなかった威力があるということが分かり、ひょっとするとあんなものからでも発信するような何かがあるような気がしています。問題なのは、自分が日本人だから日本人の中からそういうものが出てきてほしいと思うのですが、海外の反応の方がピュアです。この1カ月、悔しいのですがネットをチェックすると、1分の1について海外の方がピュアな反応があるのです。ピュアな感触の方が恐らく次の何かを生むための感覚を醸成し、何かを生み育てるのではないかなという気がしています。「日本人は慣れすぎている」という感じがちょっとします。
――先ほどコンピュータテクノロジーに大きく依存することの危険性に触れましたが、コンピュータテクノロジーに依存することが例えば作品とか作る人たちにどういう悪影響を与えるのか、もう少し詳しく教えてください。また悪影響を与えているとすればどう解決すればいいのでしょうか。
富野 コンピュータ一般というよりも、コンピュータのシステムというものを改めて考えてみると、「コンピュータのシステムとはこういうことではないか」という発想を思いつきました。「よくできた官僚システムじゃないか」ということです。
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