『機動戦士ガンダム』の監督として知られる富野由悠季氏が7月7日、東京・有楽町の日本外国特派員協会に登場、自らの半生や映画哲学などについての講演と質疑応答を行った。後半では質疑応答の内容を詳しくお伝えする。[堀内彰宏,Business Media 誠]
日本のアニメの未来は
――日本のアニメ業界では、韓国や中国に仕事をアウトソースするようになっています。日本のアニメの黄金時代は終わり、未来のアニメは韓国や中国が担い、日本のアニメは衰退するのではないでしょうか?
富野 誠に申し訳ないのですが、アニメをほとんど見ていないので状況がまったく分かりません。おっしゃられているような意味はかすかに分かりはします。創作行為の流れとしては当然、日本は今は衰退期だと思ってはいます。しかし、いつまでもそうであると思っていないという部分もあります。
この数年、文化庁メディア芸術祭の審査員もやりました。それから大学関係の学生の仕事やなども見せてもらっているので、その今の世代がどのようにアニメに向き合っているかという姿は多少承知しています。
質問の答えにはならないのですが、今アニメーションという媒体に関しては危険な領域に入っていると思います。どういうことかと言うと、個人ワークの作品が輩出し始めていて、スタジオワークをないがしろにする傾向が今の若い世代に見えているということです。スタジオワーク、本来集団で作るべき映画的な作業というものをないがしろにされている作品が将来的に良い方向に向かうとは思っていません。
中国と韓国に関してはお国も力を入れているという状況もあって、それなりに作品が出ていることは事実です。新しい環境の中で、新しいジャンルに挑んでいる新しい才能も見ることができるので、日本の現状から見た時に強敵が立ち現れているという感覚はあります。
ただ、不幸なことが1つあります。技術の問題です。デジタルワーク、つまりCGワークに偏りすぎることによって、昔、映画の世界であったスタジオワークというものが喪失し始めている。そのため、豊かな映像作品の文化を構築するようになるとは必ずしも思えないという部分があります。ハリウッドの大作映画と言われているものがこの数年、年々つまらなくなっているのは便利すぎる映像技術があるからです。
韓国、中国、香港、台湾のように映像開発の後発国は、いきなりデジタルを手にして映像創作の領域に踏み込んできたわけですから、彼らは今面白くて面白くてしょうがない。しかし、彼らは本来的な意味での映像の機能についての癖を正確に認知しているとは思えない。ただそれに関して言うと、日本もそうですし、ハリウッドの人たちもデジタルの危険性というものをあまり認識していないように見えます。
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