自分の中には価値創造する回路がある。その回路空間のふくらみこそ仕事のふくらみをつくる
例えば、普通人はリンゴが木から落ちるのを「見る」だけですが、
ニュートンはそこに万有引力を「観た」わけです。
同じように、単に情報を耳に入れるだけなら「知る」ですが、
それをみずからの経験や他者からの助言などと照らし合わせ高度な情報に精錬させれば、
それは「識る」「智る」になります。
情報はその接し方によって、データにも知識にも知恵・叡智にも変容します。
また、「かんがえる」にも深さがあります。
物事の表層をなぞるだけの「考える」もあれば、
その奥底の本質まで「なぜだ?なぜだ?」と探りを入れて洞察する「考える」もあります。
「つくる」も深みにさまざまあるものの代表格です。
安易に他を真似て「作る」レベルもあれば、
これまでにない独自の発想で「創る」レベルもあります。
また、職人の世界では、ものを加工する場合、
実に多くの技を状況に応じて使い分けします。
例えば、腕の立つ金属加工の職人たちの間では、鉄を「けずる」場合、
「削(けず)る」、「挽(ひ)く」、「切(き)る」、「剥(へず)る」、
「刳(く)る」、「刮(きさ)ぐ」、「揉(も)む」、「抉(えぐ)る」、
「浚(さら)う」、「舐(な)める」、「毟(むし)る」、「盗(ぬす)む」など、さまざまあります。
一般素人であれば、一緒くたで削ることしかできないことも、
職人は一段深いレベルで多種多様な能力を発揮し、「けずり分ける」のです。
◆「知る-わかる-できる-教える」のレベル差
さらには、上流・中流・下流といった部屋の壁をまたいだレベル差も考えられるでしょう。
「知る」→「わかる」→「できる」→「教える」がそのひとつです。
例えば、陶芸について何らかの能力があるといった場合、
焼きものの製法や歴史を「知る」というレベルが第1、
第2レベルは、なぜその製法がよいのかという化学的、実践的な裏づけまで「わかる」というものです。
そして、第3として、実際、自分でロクロを回して、窯で焼くことが「できる」レベルとなり、
第4に、それらすべてを他人に「教える」ことができるとなります。
◆自分の回路空間を広げるために
私たちは優れた仕事をしようと思えば、
自分の回路空間をふくらみをもったものにしなくてはなりません。
この回路は、これまでみてきたように平面的な広がりと立体的な深みを持っています。
ある仕事を成すために、能力を多種多様に組み合わせよう、
足りない能力があれば習得して自分に増やそうというのは、
回路の平面的な面積を広げようとする努力です。
次のページこうした、広がりへの張力、深みへの引力を自分に与えてく...
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【仕事の基本概念を持つ】
2009.08.20
2009.07.26
2009.07.18
2009.07.11
2009.07.08
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。