完全密閉型では世界最大級の野菜工場が、福井県美浜にある。運営するのは京都のベンチャー、株式会社フェアリーエンジェルだ。同社の活躍は政府の目にも留まり、これを機に野菜工場支援策として150億円の補正予算が組まれた。世界の食の未来を考える同社の使命感に迫る。
第3回
「野菜工場ビジネスを世界に」
■作る、売る、食べてもらう
「ゴールは食料問題の解決なんです。だから自社工場で野菜を作っているぐらいでは埒があかないわけです」
世界の食料問題を解決するなどといえば、大き過ぎる夢にしか聞こえないかもしれない。だがフェアリーエンジェル社は本気だ。
「単に自社工場で野菜を作っているぐらいでは、食料問題の解決には到底結びつきません。もちろん今の時点ではまだ雲を掴むような話でしかないけれど、野菜工場をコアバリューとするビジネスモデルを世界中に広げることができればどうなるでしょうか」
話は、ただ野菜工場をプラント販売するといった単純なレベルで収まるものではなさそうだ。
「工場で野菜を育てるのは、そんなに簡単なことじゃありません。設備を整えるだけでも全然不十分で、最低限3人のプロが必要です」
求められる専門知識とは何だろうか。農業の専門家が求められることは、すぐに想像がつく。では残る2種類の専門家とは何か。
「まず工場内では土をまったく使いません。だから水耕栽培の専門家が必要です。そしてもう一人、生産管理のプロが欠かせないのです」
いくら高邁な理想を掲げていても、それがビジネスとして成立しない限り、世の中を変えるパワーは持ち得ない。逆にいえば、野菜工場で食料問題を解決するためには、野菜工場ビジネスが世界中に広がればいいのだ。カギは採算性にある。
「ビジネスである限り採算性がシビアに問われるのは当たり前のことです。そこで工場には徹底した効率化が求められます。だから生産管理のプロが必要なのです」
しかも野菜工場をビジネスモデルとして成立させるためには、効率生産できるだけではまだまだ不十分なのだ。要は工場を起点とするバリューチェーンを確立できるかどうかにある。
「厳密にいえば、プラント建設に関するさまざまな手続きから始まり、最終的にエンドユーザーにどう受け入れてもらえるかまでをすべてカバーしたノウハウがなければ、このビジネスはまわせません。だから我々はレストラン経営を手がけ、面倒でも自分たちの手で販路開拓まで取り組んできたのです」
いくら安心・安全、洗う必要のないおいしい野菜ができたとしても、それがエンドユーザーに受け入れられない限りビジネスは成立しない。問われるのはコストパフォーマンスでありマーケティングの巧緻でもある。超えなければならないハードルは決して低くないのだ。
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FMO第25弾【株式会社フェアリーエンジェル】
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