がん手術の経験をもとに、筆者の先輩が闘病記を書いた。きっかけとなったのは、大病院で医師に感じた、“違和感”だったという。それは……?[郷好文,Business Media 誠]
「左腕から緑色の薬剤を入れ、一定時間間隔で右腕から採血して、薬剤が肝臓でどの程度分解されているか確かめる検査です」(『我が闘病』第5章)
素人にも分かるように説明するのが、本当のプロではないのだろうか……。
研修医の素直なことば
医療の高度化でサービスを提供する側にも困惑はあるのだろう。肝臓手術からの退院前日、胆管膵外科の研修医から言われた素直な言葉も紹介したい。
「1月にもう一度入院して心臓の手術をするそうですが、僕から見たら、あの手術は想像できないですよ。外科は開けてみてどうするか考えることが出来るけど、あれ(カテーテル)は影だけ見て手術しているようなものですからね。だから僕なんかが何か言わない方がいいんです」(『我が闘病』第5章)
只野氏の身体の違和感は、大病院の匠の手技で癒えたが、心の違和感は癒やされなかったという。テクニカルなスキルだけが評価されるように見えた医師という職業への抵抗感、それが『我が闘病』を書かせたと只野氏は語る。
「患者さま」という単語を病院で聞くことはある。“患者さま=お客さま”なのだが、呼び名はともかく、本当の患者中心主義に立てば、診療予約も検査も手術も、今とはまったく違うサービス業になるのではないだろうか。
<著者プロフィール:郷 好文>
マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター作品販売「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『ナレッジ・ダイナミクス』(工業調査会)、『21世紀の医療経営』(薬事日報社)、『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。2009年5月より印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」
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