映画やテレビドラマなどを制作する上で大きな役割を果たすにも関わらず、監督に比べて地味な存在と思われがちなプロデューサー。東京ディストリビューション・オブ・コンテンツセミナーで行われたGONZOの内田康史氏の講義では、どうアニメを海外に売り込むかということについても語られた。[堀内彰宏,Business Media 誠]
産学共同映像研究所は5月23日、東京ディストリビューション・オブ・コンテンツセミナー(TDCS)の一環としてGONZOの内田康史氏を講師に招き、「TDCSワークショップ」を開催した。(1)、(2)では映画プロデューサーの仕事についての話が中心だったが、(3)、(4)では内田氏が自身の経験をもとに語ったアニメの海外展開の方法について紹介する。
海外展開のやり方は4つ
日本のアニメを海外展開をする場合にどういう方法があるかというと大きく4つに分かれます。1つ目はできあがったアニメを海外にライセンスする(貸し出す)という仕事。2つ目はもの作りの段階から海外と一緒にやっていくという形(共同プロダクション)。3つ目は僕らが作ったアニメをもとにハリウッドでリメイクしようという方法。4つ目はライセンスとも非常に近いのですが、自分たちが米国に支局を持って、米国の配給会社あるいはテレビ局として作品を流通させていくという方法です。
普通の会社がやっているのは1つ目のライセンスです。日本の会社が米国の会社に7~13年くらいの期間を限定して貸し出すのですが、これだけ最初にお金をくださいという最低保証金額(ミニマムギャランティ)を設定します。そして7~13年経ったら、いったんこの契約は全部破棄して、もう一度継続しなおすかどうか考えましょうという契約です。
ミニマムギャランティの計算法はいろいろあるのですが、期間中に彼らは10万本のパッケージを売ろうと思っていたとします。(DVDなどを)1本当たり 5000円で売ってその20%は作品を貸し出した日本の会社に戻しましょうということになれば、1000万円(5000円×20%×10万本)のお金をミニマムギャランティとして支払うという交渉になります。
10万1本目からは向こうも商売としては成り立っているので、ライセンス料を30%(1500円)に上げようというような条件が付いていたりします。彼らから3カ月に1回くらいレポートが来て、「10万枚売れました」となると、そこからは1本売れるごとに1500円入るというように、日本の権利元に少し余分にお金が支払われる状況になってきます。これを業界用語では「オーバーエッジ(Overage、追加分)が出たね」という言い方をします。
共同プロダクションは最近少し増えてきていて、2003年の『アニマトリックス』(ワーナー・ブラザーズ)が代表的な作品です。『マトリックス』のアニメ版なのですが、この辺りから米国と日本のクリエイティブスタッフが一緒にものを作るスタイルが増えてきました。ちなみにその時にワーナー・ブラザーズ側のプロデューサーだったマイケル・アリアスは今、日本に住んで映画監督になっていて、『鉄コン筋クリート』は彼がプロデューサーから監督に立場を変えて初めて作った作品です。
次のページプロデューサーに大事なこと
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
映画プロデューサーの仕事とは
2009.07.02
2009.06.30
2009.06.25
2009.06.23