映画やテレビドラマなどを制作する上で大きな役割を果たすにも関わらず、監督に比べて地味な存在と思われがちなプロデューサー。プロデューサーの仕事とはどのようなものなのか、東京ディストリビューション・オブ・コンテンツセミナーでGONZOの内田康史氏が語った。[堀内彰宏,Business Media 誠]
日本のコンテンツ産業全体の売り上げに占める海外での売り上げの比率は3%程度です。これは2000年の数字ですが、一番新しいデータでもそれほど変わらないと思います。新聞などで言われているほど、売り上げは立っていないという現状です。米国のコンテンツ産業は輸出産業としてどうなのかというと、海外の売り上げは17%を占めています。つまり、日本は国内でまだ伸びる可能性を秘めているし、海外でも米国の6分の1程度しかないので、「のびしろがある」という言い方ができると思います。
プロデューサーとは
内田 ディレクター(監督)とプロデューサーは、“作る人”と“売る人”と考えると分かりやすいでしょう。ディレクターが作る人で、プロデューサーはその事業を完成させてお金にする人だと考えた時、背中合わせで仕事をするケースがほとんどです。日本では「監督がすべてのものを決める」という言い方をよくされます。しかし例えばスタジオジブリでは、宮崎駿さんがいいものを作ることに専念する一方、その裏で鈴木敏夫さんというプロデューサーが全体のコーディネイトをして、いろんなパートナーシップを組んで助けているのです。
ディレクターとプロデューサーのパワーバランスはチームによって違うと思いますが、だんだんプロデューサーの力が強くなってきています。プロデューサーが強くないと、商売ができないのではないかということにもなっています。先ほどお話したように、邦画がこれだけ大きくなっているのは、作り手だけではなくて、それを事業にするインディペンデントのプロデューサーやテレビ局のプロデューサーがノウハウを身に付けたからここまで大きくなった、という一面もあります。
私自身、経験が10年しかないのですが、「プロデューサーとは?」と聞かれた時には、「作ることと売ること、両方のバランス感覚を持っている人だ」と言っていて、自分自身もそう心がけています。クリエイターと話をして、あるいは原作の本を読んで、あるいはオリジナルのことを考えて、それをどういう風に作品にしていくのかという企画書は自分で書くようにしています。それと同時に、その作品を売り込んでお金にする事業計画書も自分で書くようにしています。プロデューサーは売る仕事、クリエイターは作る仕事と思っている人が多いですが、「両方できてこそプロデューサーだ」と目標としてはありたいなと思います。
もう1つプロデューサーに大切なことは「リーダーシップがあること」だと思います。例えば、トヨタがプリウスというクルマを作る場合には、コンセプトを作って、それに見合うコストや研究費を考えて、このクルマのニーズは社会的にあるのかというところまで考えて企画書を出さなければなりません。それと同じように映画プロデューサーは全体をコーディネイトしなければならないのですが、それはトヨタの社長や取締役レベルの仕事ではないかと思うからです。
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映画プロデューサーの仕事とは
2009.07.02
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