~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
このことは彼なりにマーケティングの極意だと思った。
それと、以前赤坂の夜、マイクが言っていた「ビジネスプロデュー
サー」という意味がなんとなくわかったような気がした。
「柴田さん。ひとつ言わせて下さい。 そのプロジェクトは、たま
たま関さんと柴田さんという優秀な商社マンが、たまたまうまく
コンビを組んだから出来たのでしょう?
とても自分にはそんな大それたことをやる自信がありません・・・」
宮田は正直に気持ちを語ってみた。
実際、横で汗を書きながらメモをとっている森永とそんなことを
やっている姿をイメージしようとしたが、何度やっても鮮明な
イメージが見えてこなかった。
「そんなことはない」
柴田はきっぱり言った。
「何も我々が何か特別なことをやってきたわけじゃないよ。
要はそういう意識をもって日常のあふれる雑事に対処しているか
どうかが大事なんだ。
普段やることは地味なことの繰り返しだが、そこに確固たる戦略を
もって実際に行動するかどうかが大事なんだよ。
君だってさっき関が目をつけたニーズを俺が質問したら、
見事に言い当てたじゃないか」
「はい。確かに」
「あれが戦略の取っ掛かりなんだ。 あそこに目をつけるという
ことそのものが、とても大事なことなんだということを商社マンは
知っている。
君は大学を優秀な成績で卒業し、頭脳明晰で知能指数も高く頭は
誰よりも冴えわたっているエリートだと自分のことを思っているかい?」
宮田は、頭がシャーベット状態であるといわれた関の言葉を思い出し
ながら、頭を横に振っていた。
横を見ると同期の森永も、もっと強く頭を横に振っていた。
むしろその逆であるといった方が正しいように思った。
「だろう。 森永だって柔道ばっかりやってきて、脳みそが筋肉だと
からかわれているよね。 俺だって、関だって同じだ。 別に特段
優れた営業マンでもサラリーマンでもない。
ただ、商社マンとしてやるべきことはきちんとやった。その違いだけだ」
「それは何でしょうか?」
「それは何か・・・。 そうだね。
まず、戦略を立てること。 そして、いったん戦略を立てたらそれを
地べた這いずりまわっても、地道に確実に実行することかな。
それとね、戦略を実行するためには、いったん戦術に落とす必要が
あるのだ。 これっていわゆる実行プランともいう。
この実行プランを、使命をかけて行うことが大事なんだ。
ところで、{実行}や{使命}という字を見てどう思う?」
宮田は、会話の最初から柴田の突然本質を突いた質問攻めに
戸惑いながらも、自分の知的想像力にだんだん火がついていくのを
感じていた。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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