~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
第二章 一人前への長い道のり
お客様と会話をするきっかけを作ることが如何に難しいのかを
初めて認識した宮田だった。
< こんなん、虫けらあつかいやんけ・・・ >
宮田は、マイクからマーケティングの重要性を説かれたことも
あって、マーケティングの本を買って読んでいた。
その中にAIDMA理論というのがあったことを思い出していた。
この理論は、購買決定プロセスにおける消費者の行動心理を表した
もので、それぞれの心理の頭文字をとってAIDMA(アイドマ)
と呼んでいた。
A : Attention (注目)
I : Interest(興味)
D : Desire(欲望)
M : Memory(記憶)
A : Action(行動)
宮田は、峰山課長のInteres(興味)を引くどころか、Attention
(注目)さえも持ってもらえなかったことに情けなくなった。
結局、その後カタログを手にぶらぶらと事務所を歩き回り、資材部
にも顔を出したが、誰一人としてまともに取り扱ってくれない。
それどころか目を合わせてさえくれない。
まるで厄介者が近づいてくるかのように追い払われる自分に、
さすがに宮田も、何でこうなのだろうと思うと悲しくなった。
大学を出て大志を抱いて上京し、入った商社なのに、なんでこんな
ことをしなくてはならないのだろうと自問自答していた。
< 海外取引やったらこんな地味な売り込みせんでもえーんやで。
きっと。 もっと格好ええのんとちゃうんか? >
国内営業の担当を言い渡されて、本当にがっかりだった。
「ばっきゃろー!。それだけか? 俺への伝言を取るためだけに
宇都宮くんだりまで出張しましたというのか?
それじゃ子供の使いじゃないか!
何のビジネスの話も出来なかっただと?
おい! お前! ふざけてんじゃねーぞ!」
くたくたになって帰社して、夕方峰山課長からの伝言をそのまま
関に伝えると、案の定雷が落ちた。
「本当に馬鹿かお前は? カタログ振り回して、その説明だけを
やってきましたなんて、そんなこたー地元の中小工具商だってできる。
お前は、どこの会社に勤めてると思っているんだ。
天下の総合商社の大日本商事だぞ。
もっと頭使え。 自分の頭だけじゃなく、人の頭も使うんだよ。
北海道の冬山の中ばっかりで生活していたから、お前の脳みそは
凍ってシャーベット状態になってるんじゃないのか?え?」
< くそったれが。 こいつそこまで言うか。 そやけどシャー
ベット状態とはこれ結構おもろいかも。 うまいこというな
このおっさんも、たまには。 これメモっとこ >
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商社マン しんちゃん。 走る!
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