~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
< 馬鹿にしくさってからに! >
「何をって・・・。 アルミニウムや銅などの非鉄製品を製造し
販売している会社じゃないんですか?」
< そこまで馬鹿にせんでもええやんけ・・・ >
宮田はそんなこと知っているといわんばかりにちょっとむっとして
答えた。
「そう。 その通り。 では、どんな製品をどのユーザーに販売
しているのか具体的に知っているかい?」
「えーっと。確かアルミの缶となる圧延製品を、色々なところに
販売しています。 具体的にどこかはよく知りません」
「その程度のことも知らないのは困りものだな。 それでは聞くが、
そもそも君は、アルミニウムという金属をどれだけわかっている
かい?」
「えーと。 鉄とは違う金属で、色は銀色のような色をしており・・・」
柴田は、これ以上宮田から何も出てこないころ合いまで待ってから
話を切り出した。
「アルミニウムという金属は、比重が2.7と他の金属と比べて
とても軽いんだ。 例えば、鉄は7.8、銅は8.9だ。
また、比強度も他の金属と比べて優れている。 単位重量当りの
強度が大きいということだ。 さらに、錆びにくいし熱伝導性にも
優れているという特性をもっている。
このように鉄などと違う金属特性を生かして、社会のいたるところで
活用されようとしている。
例えば、宇都宮工場で生産している圧延品の場合、ビールや飲料水
の缶以外にも、自動車のパネル、アルミホウィール、ラジエーター、
熱交換器という工業製品にも組み込まれている。
また、家庭用としては、タバコやラップ用などの包装用銀紙などに
使われるアルミ箔や、コンピューター用ハードディスクドライブ
(HDD)の中に組み込まれている磁気ディスク基盤、特殊用途では
新幹線や航空機、船舶、宇宙船などの構造材などだ。
それと、一円玉もすべてアルミニウムだ。
従って、販売先も多岐にわたる。 ビール会社や飲料会社、缶を作る
製缶会社、タバコ会社、自動車会社、IBMやHPなどの大手
コンピューター会社、大手重工メーカー、ボーイングなどの
航空機メーカーやスーパーなどの小売、造幣局などに販売して
いるんだよ」
隣の同期の森永もうなづきながら必死でメモを取っている。
「柴田さん。 素晴らしい金属で、販売先も色々あるということは
わかりました。 ただ、そのような情報が、僕の営業にどう役立つ
のか、よくわかりません」
宮田は、イライラして聞いた。
「ここまでいっても、君わからないのかい?
今回君の部で宇都宮工場向けに受注した大型圧延ラインを、日本
非鉄金属はなぜ導入することを決めたのか?
それは彼らの製品のニーズが伸びて、需要が拡大し、それに対応する
必要が出てきたからなんだ。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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