再考築<5>:心のマスターとなれ

2007.08.07

組織・人材

再考築<5>:心のマスターとなれ

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

【弊著・予告最終編】欲望は、人を惑わせもするし、成長させもする。欲の持つこの陰と陽の2面をいかに自己コントロールするかが、よりよく働く上で重要な分岐点となる。

欲望自体は滅することもできないし、また、そうする必要もない。
善にも悪にもなりえる欲望は、そのコントロールのしかたこそが問題なわけです。

*********

欲の持つ善悪2面性は、とてもあいまいでとらえにくいものです。
その善悪2面は、表裏一体でありながら、表と裏は境目がなく、つながっています。

私は、本著で欲望のもつ2面性を「メビウスの帯」としてとらえました。
図のように、欲のもつ陽面を<欲望X>、陰面を<欲望Y>とすると、
欲望Xと欲望Yは、表裏一体でありながら、ひとつながりのものになるわけです。
(コインの表裏のように、表裏が明確に断絶されているわけではない)

例えば、
一人の為政者が権力を持って「正義を行ないたい」という欲は、
いつしか知らずのうちに「独善を強いる」欲に変わっていくときがあります。

また、よく芸人は「遊びも芸の肥やしだ」と言って、奔放に遊びますが、
これは「立志・求道」という欲求からのものでしょうか、
それとも「享楽・奢欲」という欲求からのものでしょうか。

さらに、欲を和らげる方向にも、こうした2面の組み合わせがあります。
「清貧」でありたいは、「無頓着」で済ませたいということにつながっていますし、
また、「無欲」でいたいは、「怠惰」でいたいとつながっています。

結局、欲望を「陽面」でコントロールし、自分を昇華させることができるのか、
それとも、欲望の「陰面」に翻弄され、そこに堕してしまうのか、
ここがひとつの重大な、幸福と不幸の分岐点があるように思います。

そして、この分岐点において、自分がどのような「心持ち」をするかこそが、
最も根源的な問題となりましょう。
これは各人の価値観、哲学、思想といったものが作用する場面であり、
私がとやかくいえるものではありませんが、
一般論としては、私は、

「大我的・調和的に、開いた意志」の心持ちをするのか、
「小我的・不調和的に、閉じた感情」の心持ちをするのか、
それがひとつの分け方になるだろうと提示をしました。
下の図は、それを統合的にまとめたものです。

私は、今回の本を書くにあたって、いま一度、
偉人、事を成し遂げた人、知の巨人たちの古典名著を数多く読み広げましたが、
やはり、彼らは例外なく、
「おおいなる心持ち」をして、
「おおいなるもの」を感得しているように思います。

著書で引用したものをいくつか紹介しましょう。


「教えてほしい。いつまでもあなたが若い秘密を」――――
「何でもないことさ。つねに大いなるものに喜びを感じることだ」。
  (ゲーテ『ゲーテ全集1』)

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

フォロー フォローして村山 昇の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。