愛読していた『エスクァイア日本版』が休刊の方針を示したことにショックを受けた筆者。エスクァイアに限らず、休廃刊する雑誌や自己破産を申請する出版社は後を絶たない。出版不況を生き抜くにはどうすればいいのか、その策を考えてみた。 [郷好文,Business Media 誠]
無収入モデルの時代
雑誌不況も専門誌不況もその原因は数あれど、根本的には収入モデルが変化したことにある。Webやフリーペーパーの登場で、雑誌(が提供してきた情報は)もはやタダで手に入るようになっている。手芸書の命は型紙だが、それもネットで無料配布される。ダウンロードして、後は手芸店に走ればいい。雄鶏社は料理本にも進出していたが、料理レシピもネットで無料配布される時代。“無収入ビジネスモデル”の荒波を真っ向からかぶってしまっている。
ほかにも原因はある。出版業自体のリストラの立ち後れだ。営業収入は書籍実売と印刷広告、販売のやり方も何十年も変化がない取次流通と再販制度、店頭での平場や棚取り営業。読者は変化しているのに、出版業の仕事のあり方は昔と同じだ。
出版はリスクフリーか?
「無料配布」「リストラの遅れ」「読者の変化」、衰退にはさまざまな要因があるため、解決策は1つではない。だが、環境の変化はチャンスでもある。参考になりそうなのは邦画業界。低迷時代が長かった邦画業界が復活したのはなぜか。それは「若手監督・脚本家の起用が成果を上げていること」「デジタル化により、低コストで撮影・配給できること」「ミニシアターという発表の場が増えた」ことなどがある。作品の質が高いから観客も付いてくる。
対照的に出版業のリスクを取らない姿勢が気になる。「出版とは何かがあった結果が本となるもので、きっかけにはならない」と、ある編集者が言った。消費者が本を買う理由には、「事件」「肩書き」「実績」の介在する面が大きいというのだ。功成り名を遂げた人が書く『わたしの履歴書』がその象徴的な存在だ。海外のベストセラー版権もお墨付きだ。だから、私のように名もない著者は相手にもしてくれない(笑)
でも、それでは前例踏襲主義の役所みたいだ。もっと新人著者に門戸を開き、発掘の仕組みを作ればいいのに。書きたいという欲望は根源的なものだから、タマゴはそこかしこにいる。それを流通に載せる、低コスト制作・直販流通網を作るベンチャー出版社は出てこないのだろうか。
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