筆者が「ちょっぴりイケてない」というイメージを持っているファッションブランド「しまむら」。しかし、この不況下でも売り上げと利益を確保し、新規出店も意欲的に行っているという。しまむらはなぜ人気があるのだろうか。 [郷好文,Business Media 誠]
ブランドイメージと発声には、密な関係がある。高級ブランド「エルメス」や「カルティエ」を声に出す時、喉の奥の方で畏敬の念をこめて歯切れ良く、“エルメス”“カルティエ”と一気に発声する。それは「ポルシェ」や「ドン・ペリニヨン」でも変わらない。だが、「しまむら」の時には、口の先の方で軽快に“ シマムラ”と発声し、口元ははからずも微苦笑している。どうしたことか話し相手にも微苦笑が伝染する。「ああ、しまむらね……」と。
お口の中に微苦笑が広がるブランド、それが「ファッションセンターしまむら」だ。「安い but ダサイ」、「お得 but 部屋着」――微苦笑の正体はそんな親しみと蔑みがミックスされたアンビバレントなイメージから来るのだろうか。
だがしまむらの2009年2月期決算(PDFファイル)、不況でも前年度並みの売り上げと利益を達成。消費者の所得減と節約志向がプラス要因だとしても、過去数年、年間50店舗以上の新規出店を続けており成長軌道にある。2008年度は不況の影響か新規出店は48店と“少なめ”だったが、その躍進の秘密はどこにあるのか? 微苦笑、と思いきや実はにっこり大満足の笑顔のお客が多いのだろうか?
聞いたことのない店舗地名
あなたはしまむらで買い物をしたことがありますか? かくいう私、都会育ちでこれまでしまむらとは縁がなかった。郊外でもド外れにあり、主婦が軽自動車で乗り付け子どもを下ろすというイメージ。「足を踏み入れるのは正直ヤバい」と思っている、典型的な微苦笑派だった。
ファクトを調べると2009年2月現在1123店舗、全国津々浦々をカバーできる店舗数だ。郊外の地域密着小商圏出店が特徴で、店舗リストを見ると、聞いたことのない地名を冠した店が多い。同じ県に住んでいる人でも「こんなとこ知らねーよ」というような地名が多いのだ。最も都心の店舗は高田馬場であるが、これもやや微妙。新着情報に「しまむら神田店5月6日オープン」とある。「ナヌ? (東京の)神田にしまむら?」と思いきや高知市の神田だった。
国道ではなくB級街道沿いにある、とあるしまむらに行ってみた。郊外居住の情緒と生活リアリティが混在した立地。軽く30台は駐車できる広い駐車場、建物正面には、おなじみ赤と白の「しまむら」の文字。全店舗が300~400坪で標準化された効率経営。客単価2464円、1点単価764円(同社有価証券報告書より)を胸に秘めていざ入店。
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