「『フェアトレード』という言葉を聞いたことはあるが、説明することはできない」といった人も多いのでは。今回は、市民1人1人が直接参加できる草の根の支援活動「フェアトレード」を紹介しよう。 [松田雅央,Business Media 誠]
世界銀行の報告によれば世界の9億9000万人が1日1ドル未満で生活する最貧困層にあり、2ドル以下で生活する貧困層ならば途上国人口の半分、およそ26億人に達する(2004年現在)。開発途上国に住む人々の多くは健康、教育、生活環境に問題を抱え、例えば低所得国における5歳未満児の死亡率は先進国の15倍である。
今回は国家的な大プロジェクトと一線を画し、市民1人1人が直接参加できる草の根の支援活動「フェアトレード」を取り上げる。
フェアトレード
1970年代初め、途上国が貿易で不利な立場に置かれ、開発の芽を摘み取られている状況が盛んに報じられるようになった。その状況を憂いた教会組織と社会団体は立ち上がり、フェアトレードのコンセプトに沿って途上国の生産者と連携し良い品を適正な価格で取り引きする運動を本格化させていった。
フェアトレードは日本語で公平貿易と訳される。「環境保全」や「労働環境」に配慮し、「よりよい組合運営」などの条件を満たす生産者に対し、代金を前払いしたり長期取引を保証して収入の安定を図るのがその手法だ。生産者には厳しい基準が課されるが、その代わり製品は国際価格より高値で買い取られる。認証マークが付けられた商品は上乗せ価格で販売され、フェアトレードに共感する消費者がそれを購入する。
スイス3000円、日本3円
欧州で始まったフェアトレード運動は徐々に世界へと広がり、現在は経済・社会・環境のバランスをとりつつ途上国の持続可能な経済発展と貧困解消に重要な役割を果たす手段として世界的に認められている。フェアトレードの仕組みを確立し消費者の理解を深めるため徐々に組織化が進み、1988年オランダでマックスハベラー、1992年にはドイツでNPOトランスフェア、1997年には統一組織国際フェアトレードラベル機構が発足した。
そこには欧州諸国、日本を含む世界21カ国の国レベル組織が加盟し、現在は中南米、アフリカ、アジアの58カ国で140万人の生産者と700万人の家族がフェアトレードの恩恵を受けている。2006年度のフェアトレード商品総売上は約2600億円と推計され、成長率は実に年率50%を超す。
フェアトレード商品が最も普及するスイスの消費額は1人当たり年間2949円(2004年)。それに対して日本はわずか2.9円と、関心の高さには格段の差がある(フェアトレードジャパンのWebサイトより)。フェアトレードの盛んな国では、個人が購入するだけでなく「飲食店がフェアトレード商品を提供」、「学校・企業・役所が率先してフェアトレード商品を購入」など、多様な展開がみられる。
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