~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
「ここでは年間100万トンのアルミ圧延品を製造
している。
圧延品というのは、主にビール缶や飲料缶などの材料に
なるものだ。
今日は、制御系電気設備を担当する大手電機と大型
圧延機を納入するJHJという重工メーカー、それとプラント
据付を担当する関東プラント建設工業が一同に介しての
キックオフミーティングが行われるわけだ。
我々大日本商事は、その元請業者という立場で、
日本非鉄金属工業からすると、唯一の発注先企業だ。
大手電機、JHJ、関東プラント建設への発注は、全て
大日本商事が行う。
要は、大日本商事が全てこのビジネスを取りまとめた
ということになる!」
< 取りまとめた・・・? 何を? どうやって? >
会議室には、発注先である日本非鉄工業側の圧延部長、
設備部長以下、担当技師ら10数名、及びそれぞれの
会社から営業責任者、技師らが各社5~8人ずつ
ずらりと勢ぞろいしていた。
大日商事からは、重工プラント本部本部長の吉田、
関、宮田の三人だけであった。
我々の到着を待って、日本非鉄金属 圧延部長が口火を
切った。
「本日は、わが日本非鉄金属工業 鹿沼工場の命運を
決するともいえる第3冷間圧延機プロジェクトの
キックオフミーティングのために遠路はるばるお越し
いただきましてありがとうござました。
この冷間圧延機、いわゆる冷延機が稼動しますと、
生産量は20%アップ、品質の大幅な向上が実現可能
となり、わが社におきましては業界におけるトップの
地位をゆるぎないものにすることができると、弊社
役員一同も大変期待しているプロジェクトであります。
今回、このプロジェクトを見事に取りまとめて
いただきました、大日本商事さんの重工プラント
本部本部長吉田様からお言葉を頂きたいと存じます」
吉田本部長の挨拶が終わり、本部長、部長クラスが
部屋からぞろぞろと出て行くと、早速担当者レベルの
会議となった。
最初から、机に置かれた大きな図面を元に、機械と
電気、据付関係の技術や建設用語が飛び交う。
議事録を書くにも、飛び交う言葉がまるで英語の
ように聞こえ、何を書くべきなのかどうか、どの単語や
センテンスがキーなのかどうか、何が大事で大事じゃ
ないのかなどの判断どころか、何も聞き取れない。
2時間たってたった数行の言葉しかかけなかった。
宮田はその紙切れを恐る恐る関に見せると、いつもの
雷が落ちた。
「ばっきゃろー! お前こんなの幼稚園児でももっと
ちゃんとかけるぞ。
もっと耳の穴かっぽじって聞け!」
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商社マン しんちゃん。 走る!
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