~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者のドロドロの商社マン生活の実体験をベースに、小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
第一章 田舎学生から激動の社会人生活へ
幼稚園児以下の議事録とレッテルを貼られたことも
ショックだが、宮田がそれ以上にショックだったのは、
お客様である日本非鉄金属に大日本商事がとても評価
されていることだけはわかったが、肝心の大日本商事
の役割自体が飲み込めない点であった。
いったい全体、このビジネスを大日本商事が、あるいは
担当者である関がどう取りまとめて、どの様にビジネス
として成立させているのか、大日本商事を中心にいったい
何が起こっているのか何もかもがわからない自分が
情けなかった。
「宮田。次、現場にいくぞ!」
関が、現場視察に行くというので、巨大な建屋に
事務所から車で移動した。
工場の中にはいくつもの大型の建屋があり、その中に、
世界各国から輸入したアルミ地金をインゴットから
スラブ状にし、それを溶解炉で溶解させ、熱間、冷間圧延
工程を施し、精製してコイル状にする一環工程での大型
設備が各工程毎に納められている。
< ハー。でっかいなー。ようこんなでかいものを人間が
作りよったな! >
入り口には、巨大なシャッターがあり、そこから中を
のぞくと、天井には長さ何十メートルもある巨大な
オーバーヘッドクレーンとよばれる特殊なクレーンが
うなり声をあげて走り回っており、その下を既存の圧延機
の長いラインがずっと建屋の奥まで続いている。
圧延機が高速で回転するためにその回転部分が加熱しない
ように冷却するためのクーラントオイルが噴霧されている
ため、遥か遠くの奥のほうはぼんやりとかすんでいて
見えないほどであった。
「このラインは、数年前にうちが納入したラインだ。
これでフルターンキー契約ベースで約150億円の
ビジネスだ。
フルターンキーというのは、お客に鍵を渡し、
スイッチを入れて頂けば、すぐに運転開始する状態で
納入するという受渡し条件のことだ。
今回キックオフされたラインはこれよりもひと回り
大きい規模となる。
お前も早くこれくらいの設備をまとめられるように
なれよ!」
関が何気なく言った150億円という数字が宮田の
頭の中に響いていた。
< なんなん、それ。150億円って。
なんか実感なんかわかえへんで。
そういえば大学時代、大学生協で食べるめっちゃ
まずい定食の値段が、そういうたら150円
やった・・・ >
そういうことを思い出していた。
そのレベルが日常の物差しとなっていた宮田にとって、
商社が扱う取引金額は大きいとは聞いていたが、具体的な
案件に落とし込んで聞いてみるとその額の巨大さがより
際立って感じたのであった。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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