【ぶれない仕事観シリーズ】 日々の業務処理に追われる中にあって、はてさて、自分の「ライフワーク」とは何だったのだろうか?
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○1785年、ドイツの大詩人フリードリヒ・シラーが『歓喜に寄せて』と題した詩を書き起こす。
○1793年、23歳のベートーヴェンは、その詩に出会い、そこに曲をつけようと思いつく。
○1824年、『ベートーヴェン交響曲第9番』初演。
(ベートヴェン54歳、着想から完成まで31年の熟成期間を要した)
日本でもお馴染みベートーヴェン第九の合唱曲『歓びの歌』は、
シラーの詩を元にしている。
23歳のベートーヴェンはすでに音楽家として頭角を現し始めていたが、
やはり巨人シラーの詩には、まだ自分自身の器が追い付いていないとみたのだろうか、
それに曲をつけられず、年月が過ぎていった。
結局、楽曲化まで30年以上を要するわけだが、
ベートーヴェンはその間、そのことを忘れていたわけではないだろう。
むしろ、常に頭の中にあって、
シラーの詩のレベルにまで自分を高めていこうと闘っていたのだと思う。
『英雄』を書き、『運命』を書き、『田園』を書き、
やがて耳も悪くなり、世間ではピークを過ぎたと口々に言われ、
そんな中、ベートーヴェンは満を持して、
自身最後の交響曲として、『歓喜に寄せて』に旋律を与えた。
私は、こうした生涯を懸けた仕事に感銘を受けると同時に、
自分にとってはそれが何かを問うている。
何十年とかけてまで乗り越えていきたいと思える仕事テーマを持った人は、幸せな働き人である。
それは苦闘でもあるが、それこそ真の仕事の喜びでもあるはずだ。
一角の仕事人であろうとすれば、
「時間×忍耐×創造性」によってのみ成し得る仕事に取り組むべきだと思う。
いまのビジネス現場は、なにかと効率・スピードを求める仕事術ばかりを強要する。
すばやく機転を利かせて、キレのある処理をすることが「優れた仕事」だと奨励する。
「優れた仕事」というのは、「鋭の力」によってなされるばかりではない。
むしろ「鈍の力」によってこそ、偉業・大作・名品は生まれる。
科学の発見、研究論文、事業の構築、絵画、建築、工芸、音楽などにおいて
後世の人間に影響を与えるものは、すべて
つくり手の生涯を懸けた「時間×忍耐×創造性」によってなされたものだ。
誰が、効率的にスピーディーに作ったワインやチーズを美味しいと思うだろうか?
「即席でない仕事」「熟成・醸造の仕事」は、カッコイイ!
さて、あなたのライフワークテーマは何だろうか?
【すべてのビジネスパーソンへの問い】
□日々、業務を処理することだけで忙しくしていないだろうか?
□おぼろげながらでも、ライフワークとしたいテーマ・方向性を持っているか?
□そのテーマ・方向性に関する本や人びとと出会って、熱を保持・増大させているか?
【経営者・上司・人事の方々への問い】
□「鋭の力」と同様、「鈍の力」を育む観点を持っているだろうか?
□事業の目線を未来に開き、それに携わる従業員の成長も同時に考えてやっているだろうか?
□大きな仕事、優れた仕事、ライフワークといったことについて、自身の言葉でみなに語っているだろうか?
*詳細の議論は
拙著『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』にて
【ぶれない仕事観をつくる】
2009.05.27
2009.05.18
2009.05.13
2009.05.11
2009.05.08
2009.05.03
2009.04.28
2009.04.27
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。