セレブが火付け役のツイッターをビジネス眼で読み解く(後編)

2009.05.09

経営・マネジメント

セレブが火付け役のツイッターをビジネス眼で読み解く(後編)

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

「セレブの暇つぶし」でも、「子供の遊び」でもないツイッター。ミーハーな話題に惑わされることなく、しっかりウォッチしていく必要あり。企業がその価値をどう刈り取れるのか、アメリカの事例から考察してみる。

このように、ツイッターは、ウェブ時代の消費者のニーズや性質をよく捉えたツールであり、ビジネス利用における可能性も無限大だ。もっとも、懸念事項がないわけではない。ひとつには、非常に離反率が高いツールであるということ。セットアップが簡単なだけ、もとより何となく始めた人はすぐ「飽きてしまう」のだ。ソーシャル・メディアはみな、えてしてそうだが、ツイッターの離反率は60%(つまり、新規ユーザーの60%が一カ月間以内に活動を止める)と、ソーシャル・メディアの中でも群を抜いて高い。

また、テクノロジー・プラットフォームが不安定でシステムダウンしすい、という難点もある。だから、現時点では、カスタマー・サービス・ツールとしての信頼性は残念ながら低い。

さらに、ツイッターは無料サービスであり、収益モデルがまだ確立されていない、という事情もある。やれ、フェイスブックが手を挙げただの、グーグルが交渉中だの、アップルがオファーを検討中だの、アメリカでは買収の噂が絶えないが、ツイッターが最終的に、誰の手に渡り、どういった収益モデルに落ち着くのかも、ビジネス利用におけるその将来を左右する重大なファクターになるだろう。

ツイッターに限らず、ウェブ時代の顧客の心をくすぐるツールは、今後も続々と登場すると思われる。マーケティングばかりではなく、「企業のあるべきかたち」が豹変している時代に、新しいことを躊躇なく試し、経験から大いに学ぶ、柔軟で冒険心あふれる姿勢が求められていると感じる。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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