KDDI(au)の新ブランド「iida」。その先鋭的な狙いとは?

2009.04.21

経営・マネジメント

KDDI(au)の新ブランド「iida」。その先鋭的な狙いとは?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

企業戦略を読み解くにはフレームワークやセオリーが有効だ。しかし、それに縛られすぎると本質を見失うことになる。そんな事例が最近のKDDI(au)の展開だといえるだろう。

もっとキレイにワンセグを見たい。ケータイでもっと楽しく遊びたい。音楽を聴きたい。デジカメ並みの写真が撮りたい・・・。そんな機能特化ニーズを持った多くのユーザーはKDDI(au)ブランドで取り込む。競合に差別化を図る高機能で勝負するのは、純増数では最下位となったとはいえ、チャレンジャーとしてのポジションを維持するためには欠かせない戦略だ。
通常であれば自社のポジションに適合した戦略に絞り込むのが戦略のセオリーであるが、KDDI(au)は戦略をあえて二枚看板で展開する。それがiidaである。
デザインプロジェクトの支持層のように、携帯電話に機能ではなく、何らかの価値観を求める層が少なからず存在していることをKDDI(au)は見逃していない。その人々に、新たな価値を提示して、「この指止まれ」と発信し続ける。プロジェクトではなく、新たなブランドの立ち上げという形に踏み切ったことで、戦略をより明確化させたということだろう。恐らく、競合各社は同様な展開を売ってはこまい。デザインプロジェクトを引き継ぐiidaはKDDI(au)のニッチャー戦略であるといえる。
ニッチャーは独自の生存領域の確保こそが戦略の要。<「デザインのau」のイメージの回復>はデザイン支持層というユーザーセグメントと、ポジショニングを強固にするための明確な方向性であるといえる。

ユーザーニーズの機能強化とそこから離れる方向の二分化に対応した、KDDI(au)のチャレンジャー戦略とニッチャー戦略。どちらかに絞り込めない苦しさはあるものの、8年間のデザインプロジェクトの結実である「iida」に賭ける思いは明確に伝わってくる。今後の展開から目が離せない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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