「世界経済を回復軌道に乗せる」という目標を掲げ、首脳宣言を採択した金融サミット(G20)。景気刺激策で目標数値を明記することができなかった中で、世界中が注目したのが中国の動向だ。その理由は……? [藤田正美,Business Media 誠]
もっとも中国が2009年にどれだけ成長できるかはまだ分からない。これまではふたケタ成長が当たり前だったが、2009年については世界からの需要が急減しているため、首脳部も8%成長を目標としている。しかし世界銀行は、中国の2009年の成長率を6.5%と見込んでいる。これだけ経済成長が減速すると、新たに労働市場に参入する労働力を受け入れることができず、中国社会が不安定化するとされている。実際、2009年の春節(中国の旧正月)には、帰省する労働者の中には再び帰ってくることができない人が多かった。
中国の存在感が強まっているのは事実
中国の大型財政支出を受けて、建設機械の受注が増加したり、中国向けの海上運賃が上昇しているというニュースはあるが、それが輸出が急減するなかでどれだけ中国の成長を押し上げることができるだろうか。
それでも中国の存在感が強まっているのは事実だし、それは経済力だけではない。最近、中国人民解放軍海軍は空母の建造について積極的な発言を繰り返している。中国は基本的に大陸国家であったが、石油の純輸入国になった1993年あたりを境に、資源の海外依存が急速に高まっている。そのため、日本流に言えば「シーレーン防衛」(有事に際して確保すべき海上交通路)という考え方が浮上しているわけだ。
東アジアで中国が「空母戦闘群」を配備するということになると、この海域での軍事バランスが大きく変化する。日本にとっても大きな脅威となるだろうし、この地域での軍事的プレゼンスを落としているロシアにとっても大きな問題だ。ただロシアのある軍関係者は、「実際に空母を運用するまでにはまだ相当の時間がかかる」とし、まだ対応を考える時間はあると指摘した。
北朝鮮の「ミサイル」発射で大騒ぎした日本だが、この中国海軍増強の方が極東の軍事バランスという意味ではもっと大きな問題であるかもしれない。この問題については、また改めて触れる。
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