今やマンションの必需品となった宅配ロッカー。そのシステムを日本で初めて立ち上げ、ダントツのシェアを誇るのがフルタイムシステム社だ。圧倒的なポジション獲得に到る同社の経緯に迫る。
「実際は現場の郵便局さんは困ってたんですよ。特にお歳暮とお中元の時期なんか局の中は足の踏み場もないぐらいや。共働きの世帯が増えて、昼間は受取る人がいないところが多い。せっかく配達に行っても持って帰ってくるのはえらいムダでしょう」
とはいえ本省と現場に認識ギャップがあるのは、お役所の常である。しかも交渉相手となる実務担当者は短期間で転勤していく。そのたびに少し進んだと思った話はまた振り出しに戻る。交渉は遅々として進まなかった。
「そやけど、こっちは本社まで移してるんやから、もう後には引けません。規則さえ変えてもろたら、売れる自信は100%ある。そらもう粘りまくったし、いろんな人に助けも求めました。郵便局に荷物があふれかえってる写真をばんばん撮って資料提供したりね」
粘り強く交渉を続けた結果、やがて一つのチャンスが訪れる。宅配物の利用促進委員会が郵政省内に設置され、原社長に意見陳述する機会が与えられたのだ。
▼当時の郵政省に原社長が、文字通り「日参」しての交渉が実を結んだ。
「このチャンスを逃したら後はない。それぐらいの意気込みで、必死の覚悟でしゃべらせてもらいました。偉い人もぎょうさんいやはりました。そこで強調したのは、何よりお客さんにとって便利で喜んでもらえること。それから郵便局の人にも絶対に役に立つシステムやということです」
理は必ず通じる。委員会での発言をキッカケに規則見直しの気運が高まり、ついに全国の郵便局に通達が出た。山が動いたのだ。これで宅配ロッカーは郵便小包の受け渡しにも堂々と使える。
「えらいもんですな、通達が出た途端に大手のマンションデベロッパーさんが自分から声をかけてくれるようになりました。さすがに大手はきちんと法務部みたいなところがあって、法律の動きをしっかり把握してる。そっからです、一気に広がっていったのは」
以降フルタイムシステム社は、宅配ロッカーに次々と画期的なアイデアを付け加えていく。これが同社の圧倒的なポジションに繋がっているのだが、そうしたアイデアを同社はどうやってひねり出していたのだろうか。
⇒次回「コアコンピタンスは管理センターにあり」へ続く(全四回)
『株式会社フルタイムシステム関連リンク』
・株式会社フルタイムシステム ホームページ
http://www.fts.co.jp/
・フルタイムロッカーユーザー向けコンシェルジュサービス フルナビ
http://www.fullnavi.jp/
・北海道・有機無農薬野菜の生産農場 フルタイムファーム
http://www.fulltime-farm.co.jp/
◇インタビュー:竹林篤実/川村真理 ◇構成:竹林篤実
◇フォトグラファー:大鶴剛志 ◇撮影協力:㈱オンボード
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FMO第18弾【株式会社フルタイムシステム】
2009.01.13
2009.01.06
2008.12.22
2008.12.16