大人の正論が炎上する理由!

2008.12.21

ライフ・ソーシャル

大人の正論が炎上する理由!

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

大人は首尾一貫していないといけないのか。 アイデンティティーは、ひとつでなくてはいけないのか。 ハローワークで、大人の正論を吐くのが首相の役割なのか。 良い大人って、どういうことだろうか。考えてみた。

良き大人とは、何歳にでもなれる。
良きリーダーとは、どんな役職にもなれる。

大人になるとは
「私という1人」になることではなく、
「いくつもの私」を束ねられるヒトになる体験をしていくことではないだろうか。

この度、麻生首相がハローワークに出向いて、また墓穴を掘った。
職を探す若者に向かって「やることが決まっていなければ、相談にもなかなかのりにくいよね…
何をやりたいか、はっきりしたらどうか」と述べた映像が全国に流れた。
大人としては、正論である。意見としては、正しいと思う。

しかしながら、
「良い大人ではない」典型的コメントである。
「良いリーダーではない」典型である。
麻生首相の頭の中には、「大人とはこうあるべき」という姿しかない。
自分がこの職探しの若者だったら・・・
自分がテレビを見ているリストラ寸前の社会人だったら・・・
そういう多様な想像力に欠けている。
ハローワークは、説教が聞きたい場ではない。
いま麻生首相が行くべき場所は、雇用をする企業の窓口だと思う。

第44代アメリカ大統領となるバラク・オバマ上院議員への世界の期待は、
黒人という人種的イデオロギーに揉まれた「いくつもの私」が内包されている、
多元的判断への期待だと思う。
政治や金融政策が、世界規模になればなるほど、多元的な判断が必要となる。
複雑な要因が絡み合う国際的課題への判断は、典型的な「良い大人」にはできない。

そういう意味において、
日本の政治の進化を拒むのは、議員の世襲制度が大きいと思う。
世襲議員には「いくつもの私」を体験する機会を持たない。
政治家として帝王学は学ぶかもしれないが、「多元的」な体験をしない。
ひとつのペルソナしか持たない議員の「チェンジ」を、大衆は、信用しない。

世襲議員ゆえに、
居酒屋も、ハローワークも知らないのであれば・・・
そのデメリットを活かすには、
体験する姿が、もっと新鮮で、生き生きとしたものでないと・・・。
わかった顔して「大人の正論」を述べても反発を喰らう。炎上する。

暴れん坊将軍も、大岡越前も、水戸光圀も・・・
下々の世界に降りたときは、生き生きとしている。
あるべき正しい姿を追いかけていない。
下々との体験を常に新鮮なものとして描いている。
ドラマの世界と言えども・・・
日本人が「上の方に期待する典型的な姿」は、そこにある。

「大人の正論」は、
「自分は、まだ正しい大人ではない」ということを共有してからでないと、その発言の浸透力を持たない。

家族も、組織も、国家も・・・
そのリーダーが、「自分は一番正しい」という一元的な幻想を捨てること。
みんなが「私は、多元的であるがゆえに、揺れてしまうこともある」ことを共にすることから、幸せへの中身ある議論は、はじまるのではないかと思う。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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