単なる天の邪鬼かもしれないが・・・。あの居酒屋、あのヒトの家のトイレに必ず貼ってある、あの説教くさい日めくりカレンダーを見ると、気持ちがどんよりする。 何故なのだろう。その便所のご教訓は、本当に、いま必要なのか。
日本の経済成長率が、第1次石油危機(1973年)当時に続く戦後ワースト2位の記録を更新した。不況だ、リストラだ・・・こういうご時勢、あの説教くさいカレンダーは、さらに猛威を奮っているに違いない。そのご教訓の数々に、書かれている言葉に、確かにそうだなと思う。相田みつをさんや武者小路実篤さんの生き様や表現活動にケチをつけるつもりは、毛頭ない。
ただ、その魂の籠もった言葉をトイレに掲出しちゃうような、ぬるーい心構え自体に、ダメな臭いがプンプンするのは、私だけなのか・・・。
この世は
わたしがわたしになるところ
自分が
自分に
なりきる
ところ
いま仮に、私が一万円を出して銀行に口座を作るとします。窓口では、係の女の子が淡々と事務処理をするでしょう。ところが同じ私が、一億円出して同じことをしたとすると、こんどは支店長が飛び出してきて、私は大変な扱いを受けると思います。
これは極端な例えですが、一万円持とうが、一億円持とうが本来の自己(私という人間の本質)は少しも変わらないんです。変わるのは銀行の扱い。つまり、 自分の外側です。変る外側に眼を向けているかぎり、本当のいのちの安らぎはありません。本当の安らぎを得るためには、眼を自分の外側ではなくて、内側に向けることです。そして自分が自分になることです。
「生きていてよかった」相田みつを著 角川文庫より抜粋
なるほどっ。心地よいっ。
が、しかし、この珠玉のコトバの数々を、薄っぺらいシンパシーで良しとすると、ただの思考停止につながるのではないか。辛い目にも逢い、挫折も味わい、心が何度も折れた経験を繰り返し、辿り着いたコトバであっとしたら、そのヒトは、このコトバを心にしまう。決して、トイレに飾ったりしないと思う。
相田みつを氏は、たくさんの苦労をされた。「内側」と「外側」の葛藤し、悶え苦しんだ結果として、「内側」に向かいましょうという言葉を紡ぎ出した。しかし、ぬるい人達は、そんな過程もそっちのけで、安心したり、癒されたり。ぬるい人達の共感の輪を拡げていく。みんなが「あぁぁぁ、それでいいのか」「だって、人間だものなぁぁぁぁ」って、用を足している。
トイレで、パンツ脱いで、ウンコして・・・そんな無防備な姿で、自分の甘さを認めてどうなる。そのぬるい状態で、パンツを上げて社会に出ても、きっと何も変わらないだろう。
評論家の佐高信氏は言う。「相田と相田の信者は心外だと言うかもしれないが、彼らはリッパに日本を悪くする片棒をかついできた」と。便所の日めくりカレンダーの教訓で救われるのは、そういうコトバで、人間をぬるーくする経営者や政治家である。社会人としての個を押し殺し、政治や会社への怒りを封じ込めようという働きになると懸念している。なるほど、一理ある。
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有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。