トヨタ「レクサス・ハイブリッド戦略」の期待効果

2008.10.09

営業・マーケティング

トヨタ「レクサス・ハイブリッド戦略」の期待効果

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

トヨタはレクサスの全車種にハイブリッドを搭載するという。現状の搭載比率約10%から一気に加速するわけだ。<独メルセデス・ベンツなど海外高級車メーカーに対抗する>ためとしているが、その狙いはどこにあるのだろうか。

上記のとおり、競合戦略として全車ハイブリッド搭載は有効だと考えられるが、トヨタ全社にとっても大きな意味があるはずだ。
レクサスはトヨタとは別ブランドだが、良きにつけ悪しきにつけ、両者は同じトヨタの傘の下と見られている。すると、レクサスの動きはトヨタブランド全体のポジショニングに大きく影響することになる。
トヨタはここ10年来「エコ」を大きく掲げてきた。車という環境負荷を高める商品を作っているが、その軽減のために注力するという姿勢だ。このポジショニングの明確化の意義は大きい。
かつて、米国ビッグ3がここまで凋落する前に、ノースウエスタン大学教授・フィリップ・コトラーが自動車会社のポジショニングについて指摘している。
「地上最強のドライビングマシン」(BMW)、「世界一安全な車」(ボルボ)など、欧州のプレミアムカーはポジショニングが極めて明確であるのに対し、米国勢はオールラインナップの弊害で、ポジショニングがあいまいになってしまっている。その結果、消費者に魅力が伝わらなくなっているということだ。(著書”コトラーのマーケティングコンセプト”より)
オールラインナップメーカーといえば、トヨタも同じである。エコに舵を切る前のトヨタのイメージとは何だっただろうか。「経済的なコンパクトカーメーカー」だろうか。しかし、それはもはや実態を示していないし、消費者に魅力的にも映らないだろう。

「エコ」はトヨタのブランド戦略の要諦だ。フラッグシップであるレクサス全車がハイブリッドを搭載するということは、「トヨタ=エコ」というブランド強化を図るという大きな効果も期待できると考えられるのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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