全国に10カ所、日本最多の地方拠点を持つのがフューチャーベンチャーキャピタル社。京都に本拠地を置く独立系ベンチャーキャピタルだ。後発、小規模ゆえに考え抜かれた同社の戦略展開の秘密に迫る。
第3回
「戦うなら敵のいないところで」
■国からの紹介が開いた扉
「最初に出した地域拠点は石川県です。といっても、狙っていたわけではなく、あくまでも偶然の要素が強いのですが」
いまFVCは全国で10カ所の地域拠点を展開している。これほど多くの拠点を展開しているキャピタルは他にない。担当者が出張ベースで地方のベンチャーをサポートするケースはあるが、自社で事務所を構え担当者をはり付けてまで地方に力を入れているのはFVC一社である。
「キッカケは私どもの2号ファンド『フューチャー2号』でした。このファンドを組む時期にちょうどベンチャー支援制度が変わり、国から資金が出るようになったのです。ファンドを組む過程でできた国とのつながりが我々にとっては幸運の扉を開くカギとなりました」
国サイドの担当部局は中小企業事業団(現・中小企業基盤整備機構)である。そこへタイミングよく石川県庁の中小企業支援担当者が相談に出向いた。折しもベンチャー支援が各地で叫ばれていた頃の話で、石川県もがんばって取り組んではみたもののどうも芳しい結果が出ない。どうしたものかといった相談が、県から国へ寄せられたのだ。
「そこで京都にフューチャーベンチャーキャピタルという会社があるので、相談に行ってみてはどうかと紹介してくれたわけです」
早速、石川県から5人の担当者が京都までやってきた。
「議論しているうちに出てきたアイデアが、我々が地元に事務所を構えて担当者を常駐させ、共同でファンドを作るやり方です。このスキームなら国も資金を出してくれる。それでやりませんか、という話がトントン拍子にまとまりました」
当時、FVCに石川県出身の優秀なメンバーがいたことも強力な後押しとなった。まだ創業後2年ぐらいしか経っていなかったにも関わらず、川分社長は第一号の拠点として石川県への進出を決断する。
「立て続けに次は岩手県に出ることになりました。たまたま石川県の谷本知事と岩手県の増田知事が同じ官僚出身で、若い頃に一緒にしたことのある仲だったのです。谷本知事から話を聞いた増田知事から、岩手もサポートしてほしいと申し出を受けました」
もちろん、いくら紹介があったとはいえ、それだけですぐにという話にはならない。税金を使う話である以上、行政サイドも慎重にならざるを得ないわけだ。
「岩手からは担当の方が一度、京都まで来られてじっくりと話をしました。その方は後に全国のベンチャーキャピタルを細かく回られたと聞いています。その結果、最後にもう一度我々のところに、今度は知事も一緒に来られて、手伝ってほしいということになりました」
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FMO第15弾【フューチャーベンチャーキャピタル株式会社】
2008.10.14
2008.10.07
2008.09.30
2008.09.22