全国に10カ所、日本最多の地方拠点を持つのがフューチャーベンチャーキャピタル社。京都に本拠地を置く独立系ベンチャーキャピタルだ。後発、小規模ゆえに考え抜かれた同社の戦略展開の秘密に迫る。
第2回
「京都を日本のシリコンバレーに」
■成功者が多い街・京都
「日本のシリコンバレーを作りたかったのです」
なぜ本社を東京ではなく、あえて京都に置いたのかという質問に対する川分社長の答だ。
「日本のシリコンバレーとなり得る土地はどこか。さまざまな要素を加味して考えた結果、最終的に残ったのが京都と筑波でした」
10年前、前職で大阪支店長まで勤めた川分氏には起業時、本社所在地として3つの選択肢があった。地盤のある大阪、そして京都と東京(筑波)である。
「総合的に勘案して京都に決めました。理由はやはり大学が多く、学者、学生の街であること。ノーベル賞受賞者も多く出ていて理系やハイテクに強い人も多い。裸一貫からの成功者もたくさんおられますから」
京セラ、オムロン、ロームに堀場製作所、日本電産などはいずれも京都発のベンチャー企業である。
「何もないところから創業した成功者が皆さん、まだ健在でしょう。身近にそうした起業家がいることが、起業家の卵たちにとってはまたとない刺激となります。シリコンバレーで次々にベンチャーが生まれているのも同じ理由からなんです」
▲京大出身ノーベル賞受賞者
12人中5人、京都大学はノーベル賞受賞者のインキュベーターともいえる組織だ。
しかも京都企業は共通して独特のベクトルを持っている。一社として決して安易に東京に向わないのだ。本社所在地はあくまで京都にこだわり、マーケットについても世界へと打って出るところが多い。
「東京を意識するのではなく、最初からグローバルマーケットで勝負しようという気概を京都企業には感じます。加えて街そのものもとても魅力的じゃないですか。魅力的な土地なら優秀な人材も集まってきやすい。夢は大きく、我々もここから日本一のベンチャーキャピタルとなり世界を目指したいと考えました」
ただベンチャーキャピタルといえば、情報が勝負である。可能性を秘めた起業家たちの情報、有望な技術を抱える企業情報などは、やはり東京に集中するはずだ。
「もちろん情報拠点としての東京の重要性をないがしろにしていたわけではありません。実際早い時期に東京にも支店を出しています。ただし、我々のような独立系ベンチャーキャピタルは何のバックボーンもない。資本力にも劣る我々が当初、勝負する土俵は決して東京ではあり得ない。そのことだけは、はっきりしていました」
弱者の戦略といえば『ランチェスター』である。定番ともいえる戦略をFVC社は次々と具体化していく。
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FMO第15弾【フューチャーベンチャーキャピタル株式会社】
2008.10.14
2008.10.07
2008.09.30
2008.09.22