学校は学習塾の営業尖兵か?
―「夜スペ」批判再び―

2008.09.13

ライフ・ソーシャル

学校は学習塾の営業尖兵か? ―「夜スペ」批判再び―

中土井 鉄信
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表

塾の講師が学校の校舎で授業を行う東京都杉並区立和田中の「夜スペ」。この「夜スペ」の賛否についてはすでに多くの議論がなされているが、スタートして半年以上が経ち、見えてきたのは学習塾の営業部隊となった学校の姿ではないのだろうか?

●「夜スペ」批判再び

 私は、以前「夜の学校で、大手進学塾の指導が受けられます――
にモノ申す」という記事を書き、東京都杉並区立和田中で行われている
「夜スペ」を批判したことがある。

「夜スペ」は、契約した塾の講師が和田中を訪れ、自発的に学びた
い同校の生徒に、放課後などを利用して学習塾の授業を行うというものだ。
 
 「夜スペ」は、2008年1月からスタートしたが、
実施前から東京都教育委員会から横槍が入るなど大きな議論を呼んだ。

と言うもの、公教育とは何かという問題を「夜スペ」は提起しているからだ。

 私自身は塾業界の出身で、学校がもっと地域に開かれれば良い
と考えているし、
また学習塾のノウハウを学校がもっと取り入れれば良いとも思っている。

 しかし、そんな私であっても「夜スペ」の仕組みには大きな問題がある
と感じざるえない。以前から批判してきたことだが、「夜スペ」は、特定
の学習塾の宣伝の片棒を担ぐような結果を招くことが発足当初から目に見
えていたからだ。

 さらに、サピックスの通常の授業料よりは安いと言っても、
夜スペの授業料は普通の補習塾の授業料よりも高く、
これでは、学校としての公共性が守れなくなってしまうからだ。

●朝日新聞の記事から見えてくる学習塾の営業尖兵となった学校

 2008年8月26日付けの朝日新聞の記事
【「夜スペ」揺れる塾 「不公平」「生徒取られる」批判も】
を読んで、上記の論点を再確認した。

「夜スペ」の中間報告というべきこの朝日新聞の記事によれば、
「和田中では夏休み中も学期中と変わらないペースで、
進学塾『サピックス』の講師が授業を続け」
「さらに、和田中から電車で30分ほどかかる三鷹市内の校舎に
和田中生用の夏季講習特別クラスもつく」り、
「希望した生徒が、午前中に塾生と同じ料金で夏季講習を受けている」
という。

 また、記事はこうも続けている。

「サピックスにとって夜スペは大きな宣伝材料だ。実際、私立中高11校
から問い合わせがあり、うち6校で授業を始めている。費用は和田中のほ
ぼ倍、それでも直接通うより安い。公立中高からも3校、問い合わせがあ
るという」

 何のことはない。和田中では夏休み中も、学習塾の夏期講習と同じよう
に「夜スペ」を行い、なおかつ希望者は、電車で30分もかかるサピックス
の校舎にまで夏期講習を受けに行っていたのだ。

 これでは、公立の中学校がサピックスの営業尖兵に成り下がったと思わ
れても仕方がないだろう。

次のページ●「夜スペ」が突きつける「公」とは何か? という問い

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中土井 鉄信

合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表

1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。

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