日本はマスマーケティングが効かない社会となりつつある。求められるのは「マス」から「One to One」への転換だ。そのためのCRMソリューション分野で高いシェアを誇り、業界を牽引するシナジーマーケティング社の極めて独創的なマーケティング戦略に迫る。
第2回
「セオリーを熟知し、あえて破る」
■ターゲットを限定しない
「マーケティングのイロハのイをあえて無視したんですよ」
CRMの会社を率いる谷井社長は、言うまでもなくプロのマーケッターである。マーケティングの何たるかについては当然熟知している。であるなら、御社ではSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)をどのように設定されたのか、と尋ねたところ返ってきたのが冒頭のセリフだった。
「セグメンテーションとポジショニングはしっかりと考えています。ただし、ターゲティングについては、いささか型破りな考え方をしています」
一体、どういうことなのだろうか。およそマーケティングの教科書ならどれを見ても版で押したように『まずSTPをしっかり定めること』と書かれているはずだ。
「おっしゃる通りです。しかし一方ではマーケティングを考えるときには、マーケットライフサイクルも考慮する必要がありますよね。CRMの市場規模が今、日本でどれぐらいあると思いますか?」
この問いに即答することは難しい。まだほとんど生まれたばかりのマーケットである、ネットをいくら探ったところで答はなさそうだ。
「もちろん、我々も手を尽くして調べたし、今も調べています。しかし私自身が十分正確だと納得できるだけのデータは、まだ存在しません。それぐらい歴史の浅い市場なんです。そこで私は200億円ぐらいだろうと仮説を立てました」
正確なデータがなければ最初の一歩を踏み出せない。石橋を叩いて渡るタイプなら、特にそうだろう。一昔前の経営者なら、そうした手堅さが成功の条件になり得た可能性もある。しかし、今の競争環境でそんな悠長なことを言っているようでは、成功は難しい。
「私が大切だと思うのは、時代観なんです。つまり、これからマーケットがどう動こうとしているのかを読み解くこと。どんなマーケットにも必ずライフサイクルがあることは、これまでの歴史が証明しています。ですから、過去の知見に当てはめてみて現状を把握し、そこから読める将来像を意思決定のベースにしています」
▲2004年シナジーマーケティング(当時インデックスデジタル)が行った調査結果。谷井社長は、CRM市場の拡大を確実に予見していた。
■既成概念を覆したCRMシステム
CRMのコアは顧客データベースである。すなわちCRMを導入するためには、情報システムを構築しなければならない。
「そういう話になると、じゃあしっかりと予算を組んで、プロジェクトを立ち上げてとなりますよね。そんな流れには何としても持っていきたくなかったんですよ、我々としては。現時点でCRMのことを正確に理解し、真剣に取り組みを進めている企業は、ほとんどイノベーター層でしかないわけですから。最初から費用面やリテラシー面でハードルを上げてしまうと、お客様となり得る企業様が、ごく一部に限られてしまう」
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FMO第11弾【シナジーマーケティング株式会社】
2008.07.22
2008.07.15
2008.07.08
2008.07.01