タテへの深化/高化と、ヨコへの変化/変容がキャリア形成の本質的な2要素であるように思える。
一方、トレッキングの場合は、
登頂のように唯一の究極目的があらかじめあるわけではない。
山の中を回遊し、何か自分のお気に入りの場所を探すという
そのプロセスが楽しみになり、それが目的となる。
途中でたまたま見つけた滝や池が気に入れば、
しばらくそこにたたずんでその居心地を楽しめばよい。
周辺に目をやると、やがて山の奥深い細かなものがいろいろ見えてくる。
トレッキングを続けていくうち、
山のことがわかってきて、体力や技術がついたとき、
その山の頂上に登ってみようとか、
向こうに見えるあの山を登山してみようとかになってもいいわけです。
逆に、登山をしていた人が、頂上から下りてきて、
今度は山腹にある池や川に留まって、
そこで山の雰囲気を満喫するということもありです。
つまり、
「登山型」のキャリアとは、
特定の山の登頂という最大の目的(=クライマックス・ゴール)を持って
それを脇目も振らず目指すキャリアです。
「トレッキング型」のキャリアは
山の中を地図を片手に、自分の関心のあるがままに回遊する。
そうするうち、いつか気が付くと自分に適する目的場所(=フィッティング・ゴール)を
見出し、そこに留まり、その場所を通して山の魅力をさらに味わう
というキャリアです。
一般的なキャリアの流れは、
まず、トレッキングで山の楽しみを得て、
そのうち、登りたい山がみえてきて、登山に挑戦するといった順序でしょう。
もちろん、生涯、トレッキングのみで終える人もいます。
また、若い頃からすでに目指したい山があって、いきなり登山を志す人もいるでしょう。
それは人それぞれでいいと思います。
また、登山型はナンバーワン、ストロングワンを志向し、
トレッキング型はオンリーワン、ユニークワンを志向するキャリア
かもしれません。
いずれにせよ
山は、「働くこと」のメタファーです。
山は、その頂上にしても、その裾野の森にしても、
実に懐の深い喜びや楽しみや“甲斐”を内包しているものです。
それらをいかに発掘できるかという、各人の見出し様が、
すなわち各人のキャリアだと思います。
【参考文献】
・『働くひとのためのキャリア・デザイン』金井壽宏著(PHP研究所、2002年)
・『キャリアデザイン入門<Ⅰ>』大久保幸夫著(日本経済新聞社、2006年)
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【2景】キャリアの要諦
2007.06.09
2007.06.01
2007.05.15
2007.05.07
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。