先日発表された中国自動車メーカーBYDの軽EV「RACCO」の市場参入についての戦略的な意味とは、どういったものなのでしょうか?
発表されている情報からも、開発着手からおよそ2年半、日本のためにゼロから設計したとBYD自身が言っており、他国で転用できない開発投資に、あえて踏み込んできたという事実自体が、日本の軽自動車市場への参入の本気度を物語っています。
2点目は「日本品質」を実現してきた点です。日本市場は、品質は当たり前、安全装備なども標準装備であることが当然という、非常にハードルの高い市場です。以前、インドのタタ社が「ナノ」という20万円の車を発表して話題になりましたが、結局日本の安全基準などをクリアできず、日本での販売には至りませんでした。
「安ければ売れる」わけではないというのが、日本市場です。BYDはその前提で、100台を超える試作車を作り、衝突試験を重ねながら、正面から安全基準をクリアしてきており、また安全装備や高品質についても実現しています。
3点目は、もたない経営です。日本の軽自動車メーカーは、長年かけて築いた販売店網やガソリン車事業という資産を持っています。だからこそ、EVの商品化には慎重にならざるを得ない側面があります。一方でBYDには、守るべきガソリン事業も、既存の販売店網もありません。
ゼロベースで、市場ニーズだけを見て商品企画・販売戦略を立てられる。これは、事業構造・資産構造の差であり、「もたない経営」のメリットです。
ここまで整理して、BYDの日本の軽自動車市場に対する本気の戦略が見えてきましたが、そこで私はある疑問にぶつかりました。軽自動車という規格は、日本以外には、ほぼ転用できません。いくら日本の自動車市場の中で一定の規模を持っていると言っても、世界一の自動車市場である米国や、世界3位のインドで同じ戦略を取った方が、投資に対するリターンははるかに大きいはずです。
なぜBYDは、他国に応用の効かない専用車両にまで開発費を投じて、130万台という決して大きくない、しかも縮小していく日本の軽自動車市場本気で挑んでいるのか、という点です。「日本市場の品質基準を突破したという実績が、世界に向けたブランド価値になる」という説明も一応可能ですが、それだけでは、この本気度に説明がつきません。
そこで少し視点を変えて、「日本市場が魅力的だから」ではなく、「他の選択肢がどうなっているか」と考えてみました。そうすると、消去法で選んだ「日本の軽自動車市場」という構図が浮かび上がってきました。
なぜなら、世界の主要な自動車市場は、現状、軒並み中国メーカーにとって「閉じている」状態にあるのです。米国は2024年9月、中国製EVへの関税を100%に引き上げました。この措置は政権交代後も維持されています。事実上の門前払いです。欧州も同様です。EUは中国製EVに対し、通常関税10%に加えて最大35.3%の相殺関税を課しており、BYD自身には17.0%の追加関税が適用されています。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。
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