成果が安定しない本当の理由──企業が見落としてきた“事前期待の構造”

2025.12.02

経営・マネジメント

成果が安定しない本当の理由──企業が見落としてきた“事前期待の構造”

松井 拓己
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

なぜ、同じ人が同じように働いているのに、成果が安定しないのか。多くの企業はこの問いに悩みつづけています。経験が足りない、スキルの差がある、マネジメントが弱い──理由として語られるのは、決まって“行動そのもの”に関するものばかりです。しかし、組織の成果が揺らぐ本当の原因はそこにはありません。最大の理由は、顧客や上司、同僚、さらには市場全体の“事前期待の構造”が取り扱われていないことにあります。

ひとりで自由に選びたい人では、求める接客は大きく異なります。

行動の良し悪しは、行動そのものではなく、その行動が“どんな事前期待の文脈に置かれているか”によって変わる。この視点を持たない限り、成果の安定化は永遠に手に入りません。

成果は “事前期待 × 行動” の掛け算で決まる

成功は、行動だけの問題ではありません。行動がどれほど優れていても、事前期待から外れた瞬間に価値は失われます。逆に、行動が多少不完全でも、事前期待と一致していれば成果は出ます。

「事前期待× 行動」の掛け算で成果は決まります。

行動の出来が80点でも、事前期待との一致度が20%なら成果はほとんど生まれません。逆に行動の出来が60点でも、事前期待との一致度が90%なら成果は大きく跳ねます。この“事前期待の一致度”こそが、多くの企業が扱えていない領域です。

成長曲線が跳ね上がる人がやっていること

ビジネスパーソンの多くは、

「経験を積み、挑戦し、たまに成功し、失敗しながら学ぶ」

という直線的な成長をたどります。これに対して成果を出し続ける人は、成功した際に必ず“構造”を見にいきます。

なぜ成功したのか。

どんな事前期待が存在していたのか。

その事前期待に対して、どの行動がどのように作用したのか。

この構造理解によって、行動をただ増やすのではなく、「事前期待に合った行動を再現する」という成長曲線に切り替わる。するとある瞬間、成長は直線から曲線へ変わり、跳ね上がりを見せます。この跳ね上がりの正体が、事前期待を起点とした“成功の再現性”です。

第2回予告:成功を分解し、再現性を手にする「ARISEモデル」へ

次回は、成功を再現可能な状態に変換するためのフレームワークであるARISEモデルを紹介します。

A:Analysis(成功の分解)

R:Recognition(事前期待の構造を読み解く)

I:Implementation(再現の型をつくる)

S:Simulation(小さく試す)

E:Expansion(横展開する)

このモデルを使えば、成果の偶然性を排除し、行動ではなく“事前期待の構造”を軸にした再現性を手にすることができます。

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松井 拓己

サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。              【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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