精密金属材料メーカー・特殊金属エクセルは創業以来、常に日本の先端産業が必要とする素材を提供してきた。同社はいま実に5万を超えるスペックを有し、更には製品を極少ロット対応で納期通りに提供する体制に向け全社取り組み中である。危機を乗り越え、奇跡的なシステムを実現した同社のイノベーションプロセスを谷口取締役に伺った。
■デリバリーセンターの奇跡
「一つ突破口が開くと、ラインは目に見えて変わり出しました。たぶん職人独特の嗅覚が働いたのでしょう。コンサルタントを自分たちの仲間だと認めたようです」
「成果は三ヶ月で出ました。チームごとのコミュニケーションが生まれれば、自然に引き継ぎが行なわれるようになります。相手の顔が見えれば、自分たちが作業した後もキレイにしておこうという意識が芽生える。そうなればしめたもの、放っておいても生産性は高まります」
現場の生産性はほどなくして格段に向上していった。残された課題は納期対応である。
「コミュニケーションがいかに業務改善に効果的か、OJTソリューションズさんの指導を目の当たりにしていましたから、納期問題もその根幹は営業と工場のコミュニケーションにあるのではないかと考えたのです」
確かに以前の営業と工場は相互不信の塊だった。お互いを信じていないから、営業は納期を前倒し、さらに数量も水増しして伝える。工場は所詮「営業が勝手に考えた納期だろうと」と高を括って約束を守らない。そこで谷口氏は営業マンを選抜して工場に異動させ、人的交流を活性化させる。これで最低限のコミュニケーション回路が通った。
「機を見計らって新しい部署を作りました。納期の問い合わせには営業ではなく、工場に新設したデリバリーセンターが対応することにしたのです」
納期についての受け答えはデリバリーセンターに一元化された。問い合わせには必ず正確な納期を30分で回答することがルールとなった。このルールが工場サイドの意識を変えた。
「当社は5万スペックと普通ならあり得ないほどの多品種を少ロット対応で生産しています。現場の段取り替えなどは本当に大変なんです。ただ、現場の人間が顧客とダイレクトに向き合う機会はない。だからつい、自分たちはこんなにしんどい思いをしているのだから少しぐらい納期が遅れてもと、心ならずも甘えが出ていたのでしょう。ところが自分たちで顧客と直接やり取りするようになると、まさか面と向かってわがままを言うわけにはいかない。約束した納期は絶対に守らなければならない。そんな意識が芽生え、そのためにはどうすれば良いのかを考える習慣が生まれました」
結果は驚くべき改善効果となって出ている。それまで納期対応率が40%を切っていた顧客に対して、デリバリーセンター稼働後は10ヶ月連続で100%の納期対応を成し遂げたのだ。この記録は現在も更新中である。
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FMO第7弾【株式会社特殊金属エクセル】
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