営業は進化する(2) 「選ばれる側」ではなく「選ぶ側」に立つこと

2025.11.26

経営・マネジメント

営業は進化する(2) 「選ばれる側」ではなく「選ぶ側」に立つこと

村上 和德
ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

私が提唱する営業の進化系「営業4.0オキシトシン営業」では、商品の良さだけではなく、「買うまでの体験」そのものに価値を生み出します。そのためには聞き上手になることが第一歩ですが、そもそも誰の声を聞くのかを間違えてしまえば、どんなに丁寧に話を聞いても成果にはつながりません。 会社も人間と同じように、扱う商品やサービスによって、それぞれ「ペルソナ」を持っています。営業がうまくいかないときは、自分は本来どんなペルソナに向かうべきなのか、改めて考えてみる必要があります。リストを渡されて、「ここを当たってこい」と言われるままにテレコールをしていても、成果はなかなか出せません。売りたい商品やサービスに最もフィットする顧客のリスト、つまり「適格見込み客リスト」を自分で作れるようになると、セールスはうまくいき始めます。

支給されたリストをこなすのではなく、顧客を知り、自分だけの適格見込み客リストを作成することは、まさに営業戦略と言えるものです。本来は、会社の上層部やマーケティング部門がサポートする仕事かもしれません。しかし、現場の本当のニーズや課題、そして、どのように解決することができるのかについて、十分に把握ができるのは、営業しかありません。

自社商品を愛し、喜んでいただけるように伝える

そのためには、まずは自社の商品やサービスの強みを知ること。営業の原点は、「自分が扱う商品を心から愛せるかどうか」にあります。顧客や会社へのエンゲージメントを語る前に、自分が提供している価値そのものを愛せるか。そこに、営業としての軸があります。

次に大切なのは、「お客様が喜ぶかどうか」という基準です。ダイヤモンドが高価でも売れるのは、贈られた人が喜ぶからです。けっきょく営業とは、お客様が喜んでいただけるように伝えていくのが仕事だと思っています。

自社の強みや商品、サービスをとにかく愛すること。そして、お客が喜んでいただけるように伝えていくこと。この二つが、私の営業育成の軸になっています。

適格見込み客リストに正解はない

適格見込み客の絞り方に唯一の正解はありません。お客様との関係性やこれまで培ってきた信頼関係もあります。成功した企業がたまたまそういう絞り方をして、それが次のモデルになるだけで、事例を挙げ出したらそれだけで半日くらいかかるほどです。

例えば、ある事務用品の大手通販会社では、一人でバックオフィス業務こなしている事務担当をペルソナに設定しました。銀行、郵便局、来客対応まで一人でこなす事務担当にとって、文房具の補充は後回しになりがちです。そこへ「文房具は明日届けます」と言ったことで、この層が一気にファンになりました。的確なペルソナを狙った結果、2000億円企業へと成長しました。

営業として、適格見込み客リストを作成するトレーニングとしてお勧めするのは、カフェでも、アパレルショップでも、自分自身で顧客体験をした際に、「このカフェは、場所を提供することで顧客に非日常体験を提供している」など、この店舗はどのようなペルソナ設定をしているのだろうかを考えてみることです。そして、自分であれば、「友人との語らいの場を提供する」などといったペルソナ設定を想像してみることです。

ビジネスとは、できるだけ少ない労力でより多くの価値を生み出す仕組みづくりだと私は思っています。「買ってくれれば誰でもいい」と言ってマーケティングや営業をしても、労力ばかりかかってしまいます。むしろ、商品が顧客を選ぶ。「選ばれる側」ではなく「選ぶ側」に立つことです。これが効率的で利益を生む営業です。

杯ブランド商品が勝ち続けるのも、客が選んでいるのではなて、商品が客を選んでいるからです。製造業でも、商品がブランド化すればコモディティ化を防いで価値を維持できます。適格見込み客をどれだけ絞り込めるかが勝負どころなのです。

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村上 和德

ハートアンドブレイン株式会社 代表取締役社長

1968年、千葉県生まれ。東海大学法学部卒業。 英国国立ウェールズ大学経営大学院(日本校)MBA。 新日本証券(現みずほ証券)入社後、日本未公開企業研究所主席研究員、米国プライベート・エクイティ・ファンドのジェネラルパートナーであるウエストスフィア・パシフィック社東京事務所ジェネラルマネジャーを経て、現職。

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