戦略プロジェクトにおいて「仮説検証」が組織全体の標準的な実践(プラクティス)として定着したとき、プロジェクト現場での最適化に加え、組織の意思決定の質と学習が着実に進化していることに気づくだろう。
4)レベルの異なる検証方法が矢継ぎ早に考案され、その手当・手配が素早くなる
検証の段階や仮説の性質等に応じて、デスクリサーチ、専門家インタビュー、クイックなプロトタイプ(MVP)による顧客テストなど、検証に必要な時間やコストが異なる多様な検証手法を柔軟に使い分ける知恵が蓄積される。
また、検証作業そのものがプロジェクトの一部として定着することと、検証に掛かる準備期間が強く意識されるため、検証に必要なヒアリング先への依頼・アポ取りをはじめとするリソースの手配や調整が迅速になると同時に従来に比べ極力前倒しされ、実行に移すスピードが格段に向上する。
5)施策案として「プランB、C」が常に検討される
(前述の)打ち手に関する複数版の検討に加え、施策の実現可能性や効果の不確実性が高い場合、「主要な施策が頓挫した場合」や「想定通りの効果が出なかった場合」に備えて、事前に代替となる施策(プランB、C)を検討し準備しておくことが当たり前になる。
これにより、不測の事態に対するプロジェクトの回復力(レジリエンス)が高まる。
6)実行計画には事後検証が含まれ、その検証対象事項毎に検証方法とタイミング、担当と報告相手が紐づく
プロジェクトの成果物である実行計画(アクションプラン)には、施策の実行フェーズだけでなく、「施策が想定通りの効果を生んでいるか」を検証するための事後検証の計画が必須要素として組み込まれるようになる。
具体的には、「何を(検証対象事項)」「いつ(タイミング)」「どうやって(検証方法)」「誰が担当し、誰に報告するか」が詳細に決められ、実行計画と一体のものとして管理されるようになる。
もちろん弊社のクライアント全社・全事業部門がこれら全部をできている訳ではないし、弊社が数年間関わらなかった間に「先祖帰り」してしまったケースもないではない。それにプロジェクトの性格や規模によっても重点や緻密さは相当異なる。
しかし全般的には、少なくともこうした側面について、初期のレベルから比べると格段の違い・進歩があることも事実である。
2.組織全体
個々の戦略プロジェクトの実践レベルが上がってきた結果、組織全体でも(大企業では往々にして事業部門単位だが)じわじわと変化が生まれてくる。
1)承認の場面において報告を受ける側が、検討過程のロジックや検証具合に、より注意を払うようになる
プロジェクトの提案を受ける側の経営層や上長は、単に「A案がベストである」という結論の魅力や熱意だけでなく、その結論に至るまでの戦略仮説の論理的な道筋(「なぜその課題が重要なのか、それをどう捉えたのか」「なぜこの打ち手が効果的だと考えるのか」など)と、その仮説を裏付けるための検証のプロセスと結果に強く注目するようになる。
経営・事業戦略
2025.04.23
2025.05.15
2025.06.04
2025.08.18
2025.09.17
2025.09.24
2025.10.20
2025.11.12
2025.11.19
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
フォローして日沖 博道の新着記事を受け取る